この研究は1981年頃から喜連川優を中心に進められた.関係データベースの処理において,2つの関係を共通項目を媒介にして新しい関係を作るジョインの作業は,両関係の全部のレコードを調べようとすると,それぞれのレコード数をm,nとしてm×nのオーダーがかかる.それに対し,それぞれの関係で項目をハッシュし,同じハッシュ値に属するレコード同士をクラスタにまとめ,クラスタごとにジョインすれば,処理はm+nのオーダーに下げられるという視点からGRACEは開発された.クラスタ単位のレコードを渡された処理モジュールは,パイプライン方式でレコードを項目でソート,マージしてジョインを行い,必要に応じて結果をさらにハッシュする.
GRACEはアーキテクチャ的には複数の処理モジュール,メモリモジュール,およびデータベースを保持するディスクモジュールで構成され,処理モジュールとメモリモジュール,メモリモジュールとディスクモジュールはそれぞれリングネットワークで接続されている.LSIのソータは処理モジュールに組み込まれ,ハッシュ機能はディスクモジュール,処理モジュールに実装されている.
(情報処理学会歴史特別委員会編「日本のコンピュータ史」(2010年,オーム社発行) pp.195-196より編集)