【三菱電機】 MELCOM PSI

1982年に始まった第5世代コンピュータプロジェクトにおいて,(財)新世代コンピュータ開発機構(略称ICOT:Institute for New Generation Computer Technology)が中心となって 開発したパーソナル逐次型推論マシン(Personal Sequential Inference Machine:PSI)を1986年に三菱電機が製品化したAIワークステーションである.

PSIは,試行錯誤(バックトラック)による推論機能を持つプログラミング言語であるPrologに,知識の階層的表現やプログラムのモジュール化を可能とするオブジェクト指向機能を加えた言語であるESP(Extended Self Contained Prolog)をシステム記述言語とし,これを高速に実行すること目的として開発された.このため,PSIのハードウェアは,Prologと同じ構造を持った機械語であるKLO(Fifth Generation Kernel Language Version-O)をマイクロプログラムにより直接実行する.

Prologで取り扱う変数は,未定義か否かが識別され,かつ,データの型がダイナミックに変わるため,メモリやレジスタは,32ビットのデータフィールドに,未定義か否かとデータの型を識別する8ビットのタグを加えた40ビットの構成となっている.また,論理空間をエリアという独立したセグメントに分割し,各エリアを1つのスタックに割り当てることにより複数のスタックを使用可能とし,バックトラックや複雑な構造のデータの動的生成を容易にしている.エリアの識別には,32ビットの論理アドレスの上位8ビットが用いられる.

PSIの主メモリは最大16M語(80MB)で,CPUは8K語のキャッシュメモリを持ち,マシンサイクルタイムは200N秒である.

PSIのOSであるSIMPOS(Sequential Inference Machine Programming & Operating System)は,マルチウィンドウを利用したユーザフレンドリな操作性,強力な機能を持つ開発ツール群,豊富なライブラリ機能を備えている.SIMPOSもESPで記述されているので,システムの全体機能をユーザプログラムからも容易に利用できる.さらに,システム構築の効率を向上させるエキスパートシステム構築ツールEXTKERNELが提供されている.

1987年には,性能が3倍以上でデスクサイドにおけるPSI IIを発表した.PSI IIでは,EXTKERNELの機能強化が行われるとともに,ユーザインタフェースとして推論機能のついた知的スプレッドシートACEKITも提供されている.


  
MELCOM PSI