1990年2月,日本航空と日本電気は世界で初めてAIを利用して全運行乗務員2,200人の月間乗務員スケジュールを短時間で作成するシステムを共同開発し,稼働させることを発表した.このシステムは両社が1986年から研究・開発に取り組み,試験運用を経て,本格運用にこぎつけたもので,このシステムのベースになったのが日本電気が開発したLispマシンLIMEである.
LIMEはProlog用の推論マシン CHI-II のアーキテクチャをベースに,UTI-Lisp機械語命令セットを実装した,バックエンド型マシンである.
特長としては,レジスタベースのマシン上に当時の大規模AI応用システムを高速に実行する環境を創り出すことを目的として,データタイプの種類を示す8ビットのタグ付き40ビット/ワードのメモリシステムと当時としては大容量(320MB)の実メモリとを備え,さらにマイクロコードに工夫を凝らしたことであった.性能評価の結果では,ほぼ同等のマシンサイクルで動作する当時のベストセラー機,スタンドアローン型のSymbolics/3600と比較して2〜10倍高速であった.