【東芝】 TOPS

東芝が開発した汎用機TOSBAC-3400シリーズ用のOSであり,科学技術計算を第一の対象として開発された.TOPSシリーズには,磁気ドラムベースで連続ジョブ実行を可能としたTOPS-1から,磁気ディスクベースでマルチディメンジョン処理を可能としたTMSまで,システム構成や機能進化に応じた多彩なバリエーションがある.

TOPS-1
TOSBAC-3400モデル20,30のAシステムと呼ばれる構成の,磁気ドラム・紙テープ読取装置ベースで連続ジョブ実行を可能としたOSであり,1964年に京大と東芝の共同開発が完了した.TOPS-1に先立って両社共同で試作したKT-FORTRANとFORTANモニターの技術がベースとなった.TOPS-1の機能構成は以下のとおりである.

図-1 TOPS-1機能構成

図-1 TOPS-1機能構成


 TOPS-2
TOSBAC-3400モデル20,30のBシステムと呼ばれる構成の,磁気テープ・紙テープ読取装置ベースで連続ジョブ実行を可能としたOSであり,1965年に開発が完了した.TOPS-2の機能構成は以下のとおりである.

図-2 TOPS-2機能構成

図-2 TOPS-2機能構成


 TOPS-3
TOSBAC-3400モデル20,30のCシステムと呼ばれる構成の,主入力にカード読取装置を採用した磁気ドラムベースのOSであり,1966年に開発が完了した.開発では,IBM7090のOS対抗が意識された.
TOPS-3では,基本的には連続ジョブ実行が行われるが,カード読取装置,カード穿孔装置,紙テープ読取装置,紙テープ穿孔装置,ラインプリンタのような低速の機器に対する入出力は,磁気ドラム経由で行われる.つまり,ユーザのアプリケーションは,直接これらの低速機器への入出力を実行する([入出力機器]<->[アプリケーション])のではなく,[低速機器]<->[IOEX]<->[磁気ドラム]<->[アプリケーション]のように,常に磁気ドラムに対する実行に置き換えられて実行される.磁気ドラムと実際の入出力機器との間のデータ転送は,OSモジュールであるIOEXの制御下で動作するデータ伝送ルーチンによって実行される.これにより,アプリケーションのターンアラウンド時間の短縮が可能となった.また,データ伝送ルーチンはユーザアプリケーションと並行して実行されるので,スループットの向上も図られた.TOPS-3の機能構成は以下のとおりである.

図-3 TOPS-3機能構成

図-3 TOPS-3機能構成


 TOPS-4
1966年に東芝が開発した TOSBAC-3400モデル40用の磁気テープベースOSで,ジョブ連続実行を可能とした.当時の代表的な大型コンピュータであったIBM7090のFORTANシステムモニターIBSYSを参考にして,開発が行われた.TOPS-1〜TOPS-3では,異なる言語で書かれたプログラムを互いにリンクして1本の実行プログラムを構成することができなかったが,TOPS-4では,それを可能とした.1967年には,磁気ディスクベースOSとなり,TSSシステムも開発された.TOPS-4の機能構成は以下のとおりである.

図-4 TOPS-4機能構成

図-4 TOPS-4機能構成


 TOPS-11
1967年に東芝が開発した,TOSBAC-3400 モデル20, 30用の磁気ディスク(可換型の磁気ディスクパック)べースのOS.磁気ディスク上には,システムライブラリとユーザライブラリ,およびデータ用のワーキングファイルが置かれた.プログラムやデータの入力は,カード読取装置,紙テープ読取装置から行われ,保存用のバイナリは,紙テープに出力された.1968年には,IC化されたモデル21,31用の磁気ディスクベースOSとなった.
TOPS-11を利用するためのハードウェアの最小構成/最大構成は次のとおりである.

<最小構成>
 本体,コアメモリ8k語(24ビット/語),磁気ディスクパック 1台
 紙テープ読取装置 1台,コンソールタイプライタ 1台
<最大構成>
 本体,コアメモリ16K語,磁気ディスクパック 2台,その他の入出力装置

TOPS-11の機能構成は以下のとおりである.

図-5 TOPS-11機能構成

図-5 TOPS-11機能構成


TOPS-14
1968年に,TOPS-4を機能強化して東芝が開発した,TOSBAC-3400 モデル41用の磁気ディスク(可換型の磁気ディスクパック)べースのOS.本格的なマルチプログラミング機能と,磁気ディスクのランダムアクセス性を有効に利用したファイルアクセス方式を提供した.  磁気ディスク上のファイルアクセス方式には,連続する入出力要求をキューイングするか否か(ブロッキングするか否か)とアクセス性能向上のためにレコードに対する索引を作成するか否かを組み合わせた,合計4種類のアクセス法が存在する.
TOPS-14を利用するためのハードウェアの最小構成/最大構成は次のとおりである.

<最小構成>
 本体,メモリ32k語(24ビット/語),磁気ディスクパック 1台
 カード読取装置 1台,コンソールタイプライタ 1台
<最大構成>
 本体,コアメモリ64k語,磁気ディスクパック 3台,磁気テープ装置 6台
 カード読取装置 1台,コンソールタイプライタ 1台

TOPS-14の機能構成は以下のとおりである.


 TMS
1970年に東芝が開発した,TOSBAC-3400 モデル41,51用の磁気ディスク(可換型の磁気ディスクパック)べースのOSで,ローカルバッチ処理とオンラインリアルタイム処理の共存を可能とした.
TMSのメモリー常駐部の大きさは,約14k語であり,OS領域としては,他に,必要に応じてTMSモジュールを磁気ディスクからメモリーにローディングするためのトランジェント領域として最小2k語,合計16k語が必要であった.このトランジェント領域は,ユーザメモリーに空きがあれば自動的に拡張され,一度磁気ディスクからローディングしたモジュールは,できるだけメモリー上に保持するように工夫されている.一方,実行するプログラムのサイズが大きかったり,同時実行するプログラムの本数が増えたりしてユーザメモリーが必要となれば,トランジェント領域は順次解放される.TMSを搭載したシステムでアプリケーションを実行させるのに必要な最小構成は,メモリー64k語(24ビット/語),ディスク(2,400k語)2台であった.

図-6 TOPS-14機能構成

図-6 TOPS-14機能構成


図-7 TMS機能構成

図-7 TMS機能構成