【NTT】 DIPSのデータベース管理システム(DBMS)

電電公社(現NTT)では、昭和47年データベースの研究を開始して以来20年,各々の時代の要求に即応したDBMSの研究・実用化を行ってきた.DIPS関連のDBMSは,130ユーザ(DIPSユーザの約9割がDBMSを利用),約1000CPU上で利用され,そのデータベース容量は約5テラバイト余りに及んだ.

(1)データベース管理システムの研究開発開始
昭和47年,DIPS応用プログラム研究の一部からデータベース管理システム(DBMS)の研究がスタートした.
昭和48年,DEMOS-Eライブラリの1つとして,汎用情報検索システム:DORISの研究に着手した.まず,DORIS-1の研究試作が行われた.引続き商用を目指したDORIS-2の開発が昭和50年に開始され,昭和54年から日経記事検索システム,CAPTAINシステム等に適用された.

(2)ネットワーク型DBMSの研究開発
一方,昭和49年には世界のデータベースの主流となりつつあったCODASYL仕様に基づくネットワーク型DBMS:DEIMS-1Mの試作を開始した.DORISが参照処理を主体とする情報提供サービス向きのDBMSであるのに対し,DEIMSは参照処理に加えオンラインでデータの追加・更新を可能とする本格的なDBMSを目指したものであった.
昭和50年には,商用向けのDEIMS-2の実用化が開始され,昭和52年にはデータ通信本部へリリースされた.DEIMS-2は,機能を重視したネットワーク型と,性能を重視しネットワーク型の一部機能を特化したツリー型の2系列で開発を進めた.昭和54年1月,ツリー型を適用した運輸省車検登録システムがサービスを開始した.その後,共同利用医療情報システム(ネットワーク型),千葉銀行システム(ツリー型)などの多くのシステムに導入された.
DBMSの有効性が認識され,より大規模なシステムへ適用範囲が拡大するに従い,DBMSに対して性能向上,分散処理機能が強く求められるようになった.この要求に応えるべく,昭和54年に,分散データベースアクセス,更新同期処理を含む通信機能を具備した大規模分散型のネットワーク型DBMS:DEIMS-3の実用化を開始した.昭和58年,まず社会保険システムへ導入された.このシステムは,データベース容量がサービス開始時約400ギガバイトの世界でも最大規模の分散型データベースであった.その後,DEIMS-3は,料金業務総合システム,電子番号案内システム,伝送路網運用保守システムなどの多くの社内システムに適用された.

(3)リレーショナルDBMSの研究開発
昭和50年代なかばになると,従来のネットワーク型/ツリー型DBMSが対象としていた定型業務に加え,OA,意思決定支援システム等の非定型業務へも適用可能な関係型DBMSが求められるようになった.昭和57年より,関係型DBMS:DEIMS-4の実用化を開始した.DEIMS-4は昭和59年にサービスを開始した医療情報システムを皮切りとして多くのシステムに利用され,データベースの普及に大きな役割を果たした.

(4)多種多様なデータへの対応
昭和55年頃から世の中では,数値・文字に加え図形情報を扱うCAD/CAM分野へのデータベース適用が盛んに議論され始めていた.DIPSにおいても,従来の数値・文字の他に,図形,画像,音声等のマルチメディア・データを一元管理し,かつ複雑な構造を持つデータを容易に扱えるマルチメディアDBMSの開発を目指すこととなった.昭和58年,DEIMS-4をベースにマルチメディア機能を付加したDEIMS-5の実用化を開始した.DEIMS-5は,昭和60年に線路土木設備設計システム,昭和62年に情報蓄積提供システム(ISS)で利用が始まった.その後も,市場動向に合わせて多くの改造を行った.昭和63年には,データベースマシンRINDAがDEIMS-5に組み込まれた.RINDAは,関係型DBMSの高速DBアクセス手段であるインデックスの利用が困難な処理の高性能化を目指して,DEIMS-5の開発と並行して研究が進められていた.また,平成3年にはデータベース24時間運用を目指したデータベースのオンライン再編成・再構成機能が追加された.DEIMS-5はこのような改良を経て,機能・性能共に幅広い適用レンジを持つDBMSとなった.