【日本電気】 ACOS-4/MVP XE

日本電気は1985年2月にACOS-4/MVP XE(Multi Virtual Processor/eXtended Environment)を発表し,1985年7月に出荷開始した.
ACOS-4/MVP XEは,ACOS-4/MVPのアーキテクチャを継承しつつ,より大規模,高性能のシステム実現にむけたアーキテクチャの変更(2Gバイトの仮想空間および実空間のサポート)を行ったものである. 1985年2月に発表されたACOSシステム1500シリーズ以降の大型システムに搭載された.

新しく採用したアーキテクチャ,および主な機能についての特長は以下の通りである.

1.アーキテクチャの特長
(1)2Gバイトの仮想空間のサポート
従来OSでは使用可能な論理空間をプロセスあたり240Mバイトとしていたが,本OSでは31ビットアドレスによる2Gバイトの論理空間を使用可能とし,FORTRANなどの大規模プログラムを容易に作成できるようにした.
(2)統合型拡張仮想計算機VMX(Virtual Machine eXtended)の採用
本OSの下で実行されるジョブとしてVMX制御プログラム(VMモニタ)を実装し,VMモニタの下に複数の仮想計算機をつくる,いわゆる統合型拡張仮想計算機システムを実現した.これにより,実計算機上のOSの下でVMモニタと並行して実行される一般ジョブは,仮想化のためのオーバヘッドをほとんど受けることなく高速処理が可能となった.

2.機能の特長
2.1 大規模・高信頼性システムの実現
(1)ホットスタンバイシステム
システムを多重化し本番系と同等な待機系システムを備え,システム停止等の障害が発生した場合には,短時間の自動切り替えによって,エンドユーザにはシステム停止をほとんど感じさせない高稼働システムを,多重システムRAS(Reliability Availability and Serviceability)機能MSRF(Multi-System Ras Facility)により実現した.図-1にその概要を示す.
(2)多様なマルチプロセッサシステムによる拡張性
最大4台までのマルチプロセッサをはじめとして,マルチシステム制御処理装置MSCP(Multi System Control Processor)を利用し,データベースの同時更新処理を可能とした多重データベース共有機能MDSF(Multi-System Database Sharing Facility)による,高度な疎結合マルチプロセッサシステムまでの,多様な高信頼システム形態の利用を可能とした.
(3)拡張仮想計算機機能による安全性の追求
1台の実計算機上に複数台の仮想計算機を動作させるVMX機能により,現行業務を仮想計算機のオーバヘッドなしに運用するとともに,新規業務開発や評価を仮想計算機上で行うことが可能となった.
2.2 科学技術計算分野での利用
(1)大規模科学技術計算を支援する豊富な機能
科学技術計算用の高級言語FORTRAN77,2Gバイトの仮想空間,統合アレイプロセッサのための自動ベクトル化機能,命令のリオーダリングなどハードウェア性能を最大限に引き出す支援を可能にした.
(2)エンジニアリング支援システム
統合CAEシステムにより,各種設計・解析システムを提供した.
2.3 拡張ネットワーク機能
(1)マルチコンピュータネットワーク
複数ホスト間のアプリケーション間通信を可能にする複数ネットワーク機能ATAM/MNF(Advanced Telecommunication Access Method/Multi Network Facility)やジョブ転送,ファイル転送,パススルー,パーソナルコンピュータやワークステーションとホストコンピュータ間での最適な機能分散を行うマイクロメインフレームリンク機能,さらには分散運用など各種のコンピュータ間ネットワーク機能を提供した.
(2)ネットワークサポート
高速ディジタル回線や通信衛星を利用したネットワーク,各種のC&C光ネットワークシステムなど,種々の通信ネットワーク構築のための支援機能を提供した.またC&Cビデオテックスシステム,企業間情報通信システム,さらに種々のVANサービスシステムの構築を支援した.


 
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