【日立】 HITAC 5020用ソフトウェアシステム

HITAC 5020は日立製作所独自の技術によって開発した国産初の大型汎用電子計算機であった.1964年試作が完了し,1965年製品第1号機を京都大学に納入した.当時はまだオペレーティングシステムという呼び方がそれほど一般的ではなく,モニタシステムと呼ばれた.HITAC 5020のモニタシステムは,モニタ,HARP 5020(FORTRAN),HISAP 5020(FCP付きオートコーダ),分類および報告作成ルーチン等から構成されていた.

(1)モニタ
モニタには,周辺入出力操作,入出力装置の割当て,モニタルーチンの保護などシステム全体に関するシステムモニタと,内部処理における各仕事の連続処理を制御するジョブモニタとがあった.
システムモニタは次のものから構成されていた.
  • HICORE:記憶装置の割付表などシステムプログラムとの情報交換の場で,磁心記憶装置内に常駐.
  • HISUP:各システムプログラムの交通整理をする制御ルーチン.
  • MCP:多重プログラミングのためのチャネルスケジューラ,各種割込み要因の監視ルーチンなどからなる主制御プログラム.
  • 操作員からの制御命令の入力と制御卓へのメッセージ出力ルーチン.
  • 中央装置,入出力装置での誤り,プログラムの誤りなどの誤り制御ルーチン.
  • ソフトウェアシステム保守のための編集ルーチン.
  • 磁心記憶装置と磁気ドラムの内容を出力するDUMPルーチン.
(2)HISAP 5020(FCP付きオートコーダ)
ファイル制御システムFCP(File Control Processor)を備えたオートコーダにより記号言語でプログラムできた.FCPはファイルの入出力に関するバッファリング,誤りの処理などを統一して扱う制御システム.ファイルスケジューラが主体となってMCPと連携して動いた.ファイル記述はファイル名と入出力装置との対応,ブロッキングの形式等を記述した.データ記述はファイルの構成要素であるデータを記述するもので,データの形式や長さを記述する.入出力操作は入出力マクロが使われた.入出力区域内または作業用区域内のデータ記録に対して,算術演算,論理演算,移動,編集などを行う演算マクロもあった.
(3)HARP 5020(FORTRAN)
IBM社のFORTRAN IV言語を採用,さらにHITAC 5020の機能を生かすために4倍精度演算,磁気ドラム入出力ステートメントなどを追加した.HARP 5020ではDOループの能率のよい制御など,演算速度を上げるために効率のよいレジスタ利用を図った.また,デバッグ用のステートメントも追加した.

図-1にHITAC 5020システムの標準機器構成を示す.標準機器構成として磁心記憶装置16K語,磁気テープ2チャネル5台,大容量磁気ドラム1チャネル3台,カード入出力装置各1チャネル1台,ラインプリンタ1チャネル1台,制御卓入出力装置1台を使用した.磁気ドラムをシステムファイルとして使用することによって,モニタルーチンをはじめ,すべてのシステムプログラムを必要なときだけ磁心記憶装置に呼び出せるようにすることで記憶装置がシステムプログラムによって必要以上に占有されることを避けるといった工夫もなされた.


図-1「HITAC 5020システムの標準機器構成」

図-1「HITAC 5020システムの標準機器構成」


磁気テープは入力ファイルとして2台,出力ファイルとして3台割り当てられるが,図-2に示すように入力,実行,出力が同時に行えるように互いに代替テープとして働くようになっていた.


図-2「標準構成のときの周辺機器の割当て」

図-2「標準構成のときの周辺機器の割当て」