1976年6月,三菱電機は,ページ式で枠内自由手書文字の読み取りが可能なM2481形光学文字読取装置(OCR)を発表した.その後,1979年4月に,読取性能を向上させ,筆記用具の制約を軽減するなど使いやすさを向上させたM2483形OCR装置を発表した.ここでは,M2483について解説する.なお,両機種の仕様は,解説の後に示す.
M2483形OCR装置は,次の特徴を持つ.
- スペクトルのピークが660nmで発光する赤色蛍光灯の開発により(従来は白熱ランプ),鉛筆やOCR専用ボールペンなどの従来の筆記用具に加え,黒色や青色の市販ボールペン,黒色のサインペン,ブラックやブルーブラックの万年筆で記入された帳票も読取り可能とした.これにより,経理・会計業務や複写紙を使用する申請・登録業務などにも幅広く利用できた.
- 帳票搬送機構の改良により,A4版横方向の帳票や,とじ穴やスプロケット穴のついた帳票が使用できた.さらに,OCR用紙に比べランニングコストが約半分ですむ上質紙の使用を可能とした.なお,帳票上のラインマークやタイミングマークは,従来どおり不要であった.
- 512ビットのラインイメージセンサを4個組み合わせたヘッド静止型の光学走査方式と,2行バッファメモリ方式の採用により,最高4行/秒の読取り速度を実現した.(M2481では約1行/秒)
- 文字認識を,処理の各段階に対応した4個のマイクロプロセッサ(プリプロセッサ1(P1),プリプロセッサ2(P2),主プロセッサ(MP),補助プロセッサ(AP))でパイプライン処理し,認識性能を向上させた.
P1は,文字の切出し・正規化・平滑化を行った.P2は,2値化を行った.MPは,特徴抽出と決定の大部分を受け持ち,認識辞書と結合されており,積和を求めるための乗算器や輪郭追跡用の専用回路が組み込まれていた.APは,MPから送られる認識候補文字の中から,文字の大きさ,上下位置および前後文字情報などを用いて,どの文字であるかを決定した.P1とAPは8ビットの1チップCPU,P2とMPは高速のビットスライス形マイクロプロセッサを使用した. - 帳票の読取制御(読取位置,文字種)と,読取データの処理(データチェック内容,出力機器)を定義したフォーマット・プログラムを,1枚のシステムディスクに最大100本格納でき,100種類の帳票を同時処理できた.
- 豊富なエラーチェック機能と処理モードにより,読取結果の信頼性と使いやすさを向上させた.
エラーチェックには,フィールド内チェック(文字種,桁数など),フィールド間演算チェック,帳票間演算チェック,ベリファイチェックなどがあった.
チェックエラーや読取不能文字に対しては,読取動作を中断して即時修正するモード,フラグをつけてバッファに記憶し,読取りを継続して,読取が終り出力機器に書き出す時に一括して修正するモード,帳票をリジェクトスタッカに排出し,読取結果を出力しないモードなどがあった.また,チェックエラーや読取不能文字がなくても,読取結果を表示し,データの確認と修正を可能にするモードもあった.
形式 | ページ式(多数行読取り) | |
---|---|---|
帳票 | 大きさ | 127×89 ~ 305×228 mm (5×3.5 ~ 12×9 インチ) |
厚さ | 連量70~110kg | |
紙質 | OCR用紙 | |
読取文字種 | 手書文字 | 枠内自由手書 数字,記号(英字,カナはオプション) |
活字 | JIS OCR-B 数字,記号(英字,カナはオプション) | |
マーク | ||
読取文字数 | 手書文字 | 最大40字/行,5字/インチ |
活字 | 最大80字/行,10字/インチ | |
マーク | 最大40マーク/行,5マーク/インチ | |
読取行数 | 最大32行/枚,3行/インチ | |
読取速度 | 最大57行/分,最大31枚/分(1行/枚) | |
ホッパ容量 | 100枚 | |
スタッカ容量 | アクセプトスタッカ 100枚 リジェクトスタッカ 100枚 |
|
電源 | AC 100V±10%,50/60Hz,約1kVA | |
外形寸法 | 900(W)×850(D)×965(H) mm | |
出力機器 | 紙テープ(8単位) フレキシブルディスク(IBMフォーマット) 磁気テープ(9トラック,800BPI) 通信回線 コンピュータ接続 |
M2483形OCR装置の仕様は次のとおり.
形式 | ページ式(多数行読取り) | |
---|---|---|
帳票 | 大きさ | 89×89 ~ 305×297 mm |
厚さ | 連量70~110kg | |
紙質 | OCR用紙,上質紙(銘柄指定) | |
読取文字種 | 手書文字 | 常用手書文字 数字,英字,カナ,記号(26種) |
活字 | JIS OCR-B 数字,英字,記号(24種) | |
旧 OCR-B 数字,英字,記号(21種) | ||
JIS OCR-K カナ | ||
407 数字 | ||
マルチフォント 数字 | ||
3/16 数字 | ||
マーク | ||
読取文字数 | 手書文字 | 最大48字/行 |
活字 | 最大96字/行 | |
読取行数 | 最大34行/枚 | |
読取速度 | 最大4行/秒,最大33枚/分(1行/枚) | |
ホッパ容量 | 300枚 | |
スタッカ容量 | アクセプトスタッカ 300枚 リジェクトスタッカ 300枚 |
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電源 | AC 100V±10%,50/60Hz,1.0kVA(基本構成) | |
外形寸法 | 1,355(W)×900(D)×1,080(H) mm | |
出力機器 | 標準:フレキシブルディスク(IBMフォーマット) オプション:紙テープ(JIS7単位+1パリティ,60字/秒) 磁気テープ(JIS8単位/EBCDIC,800/1,600BPI) 通信回線(1,200~4,800BPS,BSC方式) |