【富士通】 FACOM 6321Aおよび OCIR

FACOM 6321Aは,1985年に出荷された普及型のOCRである.当機は,パーソナルコンピュータ(パソコン)に接続し,そのパソコンにOCR制御用のソフトウェアを組み込むことでOCRの制御装置として利用する等,オフィス設置が容易な小型化かつ軽量化に加え低価格化が図られていた.FACOM 6321Aの主な特徴は以下のとおり.

  • 机の上の小スペースにも置けるデスクトップ型である.
  • 手書き文字(英数字,記号,カナ)の認識が可能.
  • 小型化を図るための最新の超LSI技術が採用された.
  • 小型化と低価格化のために対象帳票の最大サイズは実用性の高いA4に限定された.
  • 制御装置に同社として初めてパソコンを利用.スキャナ部との接続には,RS-232C(Recommended Standard 232 version C)が使用された.
  • 適用業務の拡大のため,エンボスカード(注1)の7Bフォント文字の読取りをサポート.
  • 制御装置にパソコンを利用した特性を活かして,利用者独自のデータエントリアプリケーションプログラムをBASIC言語で開発できる環境が用意された.

普及型の特性を持つFACOM 6321Aをベースに,職業安定所やハローワークに設置される労働省総合的雇用情報システムの受理端末の仕様に合わせたのが,1986年に出荷されたOCIR (Optical Character and Image Reader)である.OCIRは全国に展開する大規模システムで初の本格的なイメージデータ入力が可能なOCRであった.その主な特徴は次のとおり.

  • 地図等のイメージの読取りが可能.
  • 求職者番号を示すバーコードの認識や印字が可能(注2).
  • 受理業務向け固有機能とアプリケーションの装備(注3).

(注1) エンボスカードとは,クレジットカード等に使用される表面に凸面の刻印があるプラスチックカードである.刻印には7Bフォントがよく利用される.エンボスカードからの文字読取りには,刻印の際のノイズ,文字のかすれ,文字列の傾斜といった特有の問題に対応できる文字認識処理が必要となる.

(注2) OCRでのバーコード読取りは同社初であり,バーコードが潰れたり掠れたりしても読み取ることができる認識技術が導入された.

(注3) 受理端末での業務の効率化を図るため,複数種類の帳票(求職票,求人申込書など,異なるフォーマットや長さを持つ)が混載されても,各帳票の識別IDを判断し,それぞれに応じた処理を連続的に行う機能がファームウェアとアプリケーションによって実現された.   


  
FACOM 6321A  

OCRの解説文では,一般社団法人電子情報技術産業協会発行の「OCRカタログ用語集(第2版)」の用語を使用しています.各用語の意味については,本用語集をご参照ください.