【富士通】 FACOM 6312B

1978年8月に発表された,手書き文字(英数字,記号,カナ)を読み取ることができるOCRである.

FACOM 6312Bの技術的な特長として,従来はハードロジックを組み込んだ専用のプロセッサを用いていた制御が世界で初めて汎用的なMPU(マイクロプロセッサ)とソフトウェア(ファームウェア)による制御に置き換えられたという点が挙げられる.紙送りやセンサからのイメージ取り込みといった動作にかかわる制御がMPU上のファームウェアに置き換えられただけでなく,ハードウェアのロジック回路による文字認識処理部分もファームウェアと文字特徴を登録した照合用辞書を用いた制御に置き換えられた.ハードウェアのロジック回路による処理は比較的単純なロジックの場合は高速化に寄与するが,文字認識処理の複雑さが増すに従い,複雑さに追従できるファームウェアを含めたソフトウェア化が重要性を増したと言える.汎用的なMPUとソフトウェアによる制御方式はその後のOCR機能に幅広く適用され,OCRの機能の高度化を支える土台となっていった.

当時のMPUは8ビットで低速であったが,FACOM 6312BではマルチCPUを活かして高速化が図られた.具体的には,マルチCPUのそれぞれが以下に示すように機能を分担し,各CPUが並行して処理を遂行した.

  • 紙送り,スキャナ,オペレータパネル,ホストコンピュータインタフェース,およびフロッピィディスクなどの制御
  • 文字認識処理(手書き文字認識には反射法(注1)という技術が用いられた)

(注1) 反射法とは文字認識の方法の1つであり,文字を形成する線と線の間に生まれる余白の特徴を総合的に抽出して文字認識を行う.具体的には,描かれた文字を四角い枠で囲って見て,その枠の左右上下の各方向から見える文字の線分(反射線と呼ぶ)パターンを抽出し,そのパターンの特徴から文字を識別する方法である.比較的画数の少ない文字の高速識別に有効な方法である.同社で初めてFACOM 6312系に採用された.


  
FACOM 6312B   

OCRの解説文では,一般社団法人電子情報技術産業協会発行の「OCRカタログ用語集(第2版)」の用語を使用しています.各用語の意味については,本用語集をご参照ください.