【三菱電機,沖電気】 COSMOシリーズ モデル700, モデル700II, モデル900

国産メーカの3グループ化によって同一グループを形成した三菱電機と沖電気は,通産省の補助金を受けて大型コンピュータCOSMOシリーズを開発し,1974年に,最初のモデルであるモデル700が発表された.COSMOシリーズは,MELCOM 7000シリーズに対し,上位互換性を持っており,MELCOM 7000シリーズと比べ,汎用LSIの利用とマイクロプログラム制御方式による信頼性向上と小型・高性能化,多重入出力装置(LIOP)のインテリジェンシー向上によるCPUの負荷軽減,主記憶やディスク装置の誤り訂正機能などによるRAS(Reliability,Availability,Serviceability)機能の充実などの特徴があった.

主記憶は,64キロバイトから1,024キロバイトまで搭載できた.語長は32ビットであるが,読み出し幅は64ビットで,8ビットのECCコードが付加されており,サイクルタイムは0.9μsであった.

CPUはマイクロプログラムで制御され,1マイクロプログラムの1語は108ビットで,1マイクロ命令の実行時間は170nsであった.

仮想記憶のためのアドレス変換機構には,テーブル変換バッファと呼ばれる256語のICメモリが使用され,セットアソシアティブ方式により,1クロックでアドレス変換が行われた.

多重入出力装置(LIOP)は,インテリジェンシーを高め,低速入出力装置の接続に加えて,CPUとは独立したローカルプロセッサとして,CRTコンソールや通信回線のローカルな処理をカバーした.LIOPのマイクロプログラムは,1語16ビットで,初期マイクロプログラムロード用の256語のROMと,入出力装置対応のマイクロプログラムを入れる8キロ語のRAMを持っていた.

データ転送モードとして,バーストモードとマルチプレクスモードを備えた汎用入出力処理装置(GIOP)が用意された.バーストモードは,高速入出力装置で使われ,1ブロック転送中はGIOPを占有し,転送速度は最大2.0メガバイト/秒.マルチプレクスモードは,一度に数バイトから最大16バイトの転送を行い,転送速度は最大1.3メガバイト/秒.入出力装置にエラーが生じたときは,オペレーティングシステムの介在なしにハードウェアで入出力命令の再試行が行われた.

COSMOシリーズ向けに開発されたOSであるUTS/VSは,ユーザごとに独立した仮想記憶を提供する多重仮想記憶方式を採用.MELCOM 7000シリーズでサポートしていたバッチ処理,タイムシェアリング処理,リアルタイム処理,リモートバッチ処理に加えて,オンライントランザクション処理もサポートし,5次元多重処理を実現した.

1976年には,モデル700の後継機であるモデル700IIと,その上位機であるモデル900とを発表した.

モデル700IIは,4キロビットのICメモリを用いた主記憶装置による実装密度の向上と低消費電力化,主記憶装置の拡張(最大3メガバイト),高度のマイクロプログラミング技術による命令の先取りや命令のオーバーラップ実行による高速化,バックアップバッテリ等による電源の瞬停・停電への対処,といった特長を持っていた.

モデル900は,主記憶装置を共有するマルチプロセッサシステムであり,複数台のコンピュータを通信回線経由で結合するコンピュータネットワークにおける中枢コンピュータとしても使用できた.さらに,マイクロプログラム技術と高性能LSIの採用により,高いパフォーマンス/コストを実現していた.


 
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