電電公社(現NTT)の研究所では,システムコストの中で大きなウェイトを占めるファイル記憶の性能向上,及び経済化を図ることをねらいとして,DIPS-11/5Eシリーズ開発にあわせて,1984年より磁気ディスク装置の大容量・高速化の開発を進めてきた.1986年,大容量・高速磁気ディスク装置(通称GEMMY:Giga-byte capacity magnetic memory)を実用化した.
GEMMYは以下のような特長を持ち,従来の最上位装置であるPATTYに比べて2.8倍の記憶容量を有し,面記録密度,データ転送速度などにおいて世界最高性能レベルを達成した.
- 1) PATTYで実用化した薄膜形磁気ディスクの性能向上を進めると共に,新たに高速動作の薄膜磁気ヘッドを開発し,面記録密度 62キロビット/mm2,データ転送速度 4.4メガバイト/秒を実現.
- 2) 浮動ヘッドスライダーについては,長さを3.2mmに小型・軽量化(質量はPATTYの1/2)してディスク面への追従性能を大幅に向上.
- 3) 対称シェル構造のHAD,両持スピンドル構成などにより機構部の振動を抑圧して高トラック密度を達成.
- 4) 新素材を用いたコンパクトなデュアルアクチュエータ,フィードフォワード位置決め制御の適用により,平均シークタイム 12ミリ秒の高速位置決め性能を実現.
- 5) 4.4メガバイト/秒の高速データ転送,デュアルアクチュエータ制御,アクセスパスの有効利用を図るダイナミッククロスコールの機能拡充により高速アクセス性能を実現.