三菱電機が1972年に開発した,小形コンピュータ用のカートリッジ・ディスク駆動装置で,ミニコンピュータやオフィスコンピュータのファイル装置として使用された.このディスク駆動装置には,IBM-5440相当のトップロード型ディスク・カートリッジ(14インチ)1個と,固定ディスク1枚が実装されていた.
この装置は,以下の特長を持っていた.
- 従来の国産品に比べ,2倍以上の高速位置決め性能を持っている.
- 位置決め機構に,磁気センサとリニア・モータを組み合わせ電気的に位置を決めるサーボ・ディテント方式を採用したため,機械的磨耗がない.(従来は,回っている歯車に爪をかみ合わせて機械的に位置を決めるディテント方式を使用.)
- 独自の自己加圧形磁気ヘッド技術の採用により,ヘッドの加圧保持機構を簡素化,軽量化し,アクセスタイムの高速化を実現した.
- ディスク及びヘッドは,99.97% 0.3μmの高性能エア・フィルタを使用した内部循環気流によって清浄化している.
- 温度補償装置(プレヒータ)がオプションとして用意されており,使用温度範囲を従来の15〜35℃から5〜35℃に広げ,寒冷地での使用を容易にしている.
- 書き込み禁止,自己診断,デュアル・アクセスなどの機能を備え,大型ディスク並みの使い方が可能となっている.
記憶容量 | 6.4MB |
---|---|
トラック容量 | 7,942バイト |
記録方式 | FM方式 |
ビット密度 | 2,248ビット/インチ |
トラック密度 | 100トラック/インチ |
ディスク回転数 | 1,500rpm |
データ転送速度 | 198.6Kバイト/秒 |
位置決め時間 | 最小8ミリ秒,最大80ミリ秒,平均40ミリ秒 |
回転待ち時間 | 平均20ミリ秒 |
外形寸法(幅×高×奥) |
(自立型)910mm×740mm×490mm (電源別)510mm×310mm×840mm |
質量 |
(自立型)140kg (電源別) 75kg |
1973年には,トラック密度を2倍の200トラック/インチにして記憶容量を12.8MBとしたM802を発表した.
1975年には,駆動装置を小形化し,電源内蔵型としたM802Fを発表した.
1976年には,装置内部で,記録方式をFD(Frequency Doubling)からMFM(Modified Frequency Modulation)に変換してビット密度を4420ビット/インチに倍増させ,記憶容量を25.5MBとしたM803Fを発表した.