FACOM 493は,非可搬型ディスクモジュールを採用した富士通の磁気ディスク装置で,1978年10月に完成した.
磁気ディスクの記憶容量の大容量化のためには媒体上の記録密度の向上が必須である.しかし,可換型媒体方式を採用したディスクパックでは,他の装置で書き込まれたデータを読取るためのマージンの確保や塵埃に対する機密性の確保の面で,高密度化には限界がある.
そこで,媒体の可搬を止め,ディスク装置に媒体とヘッドを固定したFACOM 493磁気ディスク装置が開発された.この可搬型から固定型への方式の変更が受け入れられた背景には,磁気ディスク装置の記憶容量の飛躍的な大容量化が達成されたことで,ディスクパックを取り替えながら運用する必要性が下がったことが挙げられる.
本機種での固定ヘッド方式の採用は,その後の磁気ディスク装置の大容量化・高性能化技術を発展させる原点となったと言える.FACOM 493は,制御装置との接続のためのアダプタを搭載するA2形およびC2形と,搭載しないB2形がある.いずれも,2台のディスクユニットを実装し,装置として635メガバイトの記憶容量を有した.1980年4月には,FACOM 493の2倍の記憶容量を持ちながらもFACOM 493と論理的互換性を持ったFACOM 496が完成した.
一方で,中型コンピュータや小型コンピュータでは,価格面で可搬型の要求は高く,ディスク媒体とヘッドとを一体化し,これを単位として可換構造としたFACOM 467ディスクパック装置(ウィンチェスタ型ディスク)が開発された.これにより,媒体とヘッドの個体差によるバラツキを抑えることが可能となり,大容量化を実現したが,このタイプのディスク製品は長くは続かなかった.
FACOM 493A2/B2/C2 | FACOM 496 | (参考) FACOM 467 | ||
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完成時期 | 1978年10月 | 1980年4月 | 1977年3月 | |
ディスク | 記憶容量 | 317.5 MB | 635 MB | 70 MB |
ディスクのタイプ | 固定ディスク |
ウィンチェスタ (データモジュール可換) |
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ディスク直径 | 14 inch | |||
ポジショニング時間 | 20 ms | 20 ms | ||
回転数 | 3,600 rpm | 2,970 rpm | ||
平均回転待ち時間 | 8.4 ms | 10.1 ms | ||
データ転送速度 | 1.198 MB/s | 885 KB/s | ||
記憶容量/装置 | 635 MB | 1.27 GB | 140 MB | |
主要接続システム | 大型FACOM M-100シリーズ | FACOM M-130F/140F/150F |