NEAC-1210は従来の小型会計機並みの価格ながら高性能,かつストアードプログラム方式を採用することで多くの業務に対応できる超小型電子計算機として日本電気により1964年に開発された.国産機として最初に計画生産に成功し,1966年8月までに国産最多の700台強が納入されたことも黎明期のコンピュータとしては特筆すべきことである.
NEAC-1210の開発に先立ち日本電気では小型電子計算機の市場性,将来性に着目し,1961年にはNEAC-1201を開発実用化していた.その流れを受けたNEAC-1210では,基本システムを計算装置,操作卓(記憶装置を含む),NEAC WRITER(タイプライタ,テープリーダ,テープパンチ)で構成し,ストアードプログラム方式を採用した.また,パラメトロン素子による,安定,安価,小型の演算ユニットを実用化し,記憶装置に小型で安定,長寿命の磁気ドラム(記憶容量3,000桁)を開発使用した.導入設置には特別な設備が不要で,設置面積も少なく,一般事務室にも容易に設置できる経済的なシステムであった.
1965年5月から半年間,ニューヨーク世界博覧会に出展され,1966年4月には第12回大河内賞を授与された.NEAC-1210の経験は1967年発表のNEAC-1240,1973年発売のオフィスコンピュータNEACシステム100へ続く開発に生かされた.現在,計算装置や操作卓他一式が日本電気に保存されている.
NEAC-1210 | |
完成時期 | 1964年9月 |
制御方式 | プログラム内蔵方式 |
外部数値語 | 8単位,BCDコード |
内部数値語 | 正数 12桁(長語) または6桁(短語) |
負数 11桁 | |
指令(命令) | 1アドレス方式,26種 |
演算方式 | 2進化10進法,固定小数点方式 |
演算速度 | 加減算 約40ms |
乗算 ACCの有効数字1桁につき約 20ms(平均) | |
除算 ACCの有効数字1桁につき約 120ms(平均) | |
演算用素子 | パラメトロン |
記憶用素子 | 小型磁気ドラム |
容量 3000桁(長語 250語,短語 500語) | |
パリティチェック | |
入出力装置 | 光電式読取機、速度 2400字/分 |
電動タイプライタ48鍵,速度 600字/分 | |
紙テープリーダ,速度 560字/分 | |
紙テープパンチ,速度 1000字/分 | |
寸法・重量 | 計算装置 W600×D800×H750mm, 195kg |
操作卓 W1080×D700×H650mm,100kg | |
使用電源 | AC100V±10%,50Hzまたは60Hz(納入前指定) |
消費電力 | 1kVA以下 |