【東京帝国大学航空研究所】 九元連立方程式求解機

公開日:2009年3月10日
最終更新日: 2024年11月6日

九元連立方程式求解機は,東京帝国大学航空研究所の佐々木達治郎をはじめ,志賀亮らが製作した日本の初期の大型機械式計算機械の一つで,MITのジョン・ウィルバーが製作した連立方程式の解法器を参考にして開発された.製作が完了した時期は1944年または1945年頃と推定されるが,それを立証する文書等は見つかっていない.

ウィルバーは1934年にMITのバネバー・ブッシュの計算機械のプロジェクトに参加して機械による代数方程式の解法を考案し,1936年に機械式の解法器を完成した.この機械は大型のアナログ式計算機で,真鍮製のバーの角度を変えることによって,ベルトの長さを変化させ,九元までの連立方程式を1%の精度で解くことができた.この機械は,土木の構造解析や経済学上のマトリックスの計算に使用され威力を発揮した.

航空研究所の機械もウィルバーの機械と同一の構造を持ち,九元連立方程式を解くことができる.九元連立一次方程式は,一般に9個の未知数と1個の定数を含んだ9個の一次方程式からなっている.九元連立方程式求解機は鉄のフレームに角度を変えられる真鍮のバーが取り付けられており,その角度が各未知数に対応し,バー上のプーリーに架けられた鉄のテープの長さが各方程式を表している.バーを動かし,テープの長さを読み取ることにより方程式の解を求めることができる.

九元連立方程式求解機は国立科学博物館の常設展で展示されている.この機械はジョン・ウィルバーの製作したオリジナルの機械と差異は無いといわれている.同種の機械は世界で数台製作されたが,日本のもの以外は現存していない.


 
九元連立方程式求解機九元連立方程式求解機 部分