1978年に東芝によって開発された,初の日本語ワードプロセッサ.1978年9月に発表,出荷開始は,1979年2月.当時,コンピュータで取り扱える日本語の文字は,特殊な機器を用いる一部システムを除き,カタカナが当たり前であった.一方,欧米では,タイプライタから進化したワードプロセッサが広く普及しており,日本語で利用できるワードプロセッサが望まれていた.
東芝では,総合研究所で森健一らによって基礎研究を重ねた文節指定入力によるかな漢字変換を,ミニコンTOSBAC-40Lを母体にした事務机サイズのハードウェアに搭載し,日本語ワードプロセッサJW-10として発売した.文節指定入力とは,文章の読みを文節ごとに区切って入力する方法で,たとえば,「漢字を簡単に入力する」という文章を入力する場合,「かんじを かんたんに にゅうりょくする」のように3つの文節に区切って入力をする.JW-10の入力方法には,文節指定入力のほかに,漢字指定入力があった.漢字指定入力は,漢字部分を指定して入力をする方法で,先の例の場合には,「【かんじ】を【かんたん】に【にゅうりょく】する」のように入力する.かな漢字変換技術の開発にあたっての最大の課題は,同音異義語の選択であった.結局,文章の前後関係,使用頻度などを利用した方式とした.かな漢字変換で使用する辞書には,最大80,000語まで登録が可能で,使用者別に頻度管理を行っていた.標準登録語として辞書に登録されたのは,普通単語が54,000語,固有名詞が8,000語であった.この標準登録語以外に,ユーザが単語を登録することができたが,その語数は,普通単語が10,000語,固有名詞が8,000語であった.JW-10が発表された時の新聞では,かな漢字変換の実用性を,「例えば...ウラニワニニワトリ -> 裏庭に鶏」という表現を用いていた.
JW-10は,10メガバイトの磁気ディスクと24ドットのシリアルプリンタを搭載し価格は630万円であった.
東芝では,その後1980年5月に,JW-10の改良機であるJW-10モデル2と,普及型ワープロのJW-5を発表した.JW-10モデル2,JW-5では,操作性向上,構成編集機能の強化,低価格化が図られた.
JW-10 | JW-10モデル2 | JW-5 | ||
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発表/ 発売時期 |
1978年9月/ 1979年2月 |
1980年5月/ 1980年7月 |
1980年5月/ 1981年1月 |
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価格 | 630万円〜 | 340万円〜 | 260万円〜 | |
入力 | 方式 | かな漢字自動変換方式 | ||
入力モード | 2種(漢字指定モード,文節指定モード) | |||
同音語選択 | 2種(一括選択モード,逐次選択モード) | |||
登録語数 | 最大8万語 | 最大4万語 | ||
キーボード | JIS配列,または50音順配列 | |||
文字種 | 6,802字(JIS C 6226) | 6,802字(JIS C 6226),外字 | ||
字体 | 明朝体(24×24ドット) | |||
校正編集機能 | 訂正,挿入,削除,全文対象,移動,タブ,インデント,センタリング,下線,枠空け,切りばり,さし込み,作表,自動ページング,禁則処理,フォーマット変更,横書き/縦書き | 訂正,挿入,削除,全文対象,移動,コピー,タブ,デシマルタブ,インデント,センタリング,右寄せ,下線,枠空け,切りばり,さし込み,作表,自動ページング,倍角印字,袋とじ印刷,禁則処理,フォーマット変更,定型句入力,横書き/縦書き | ||
文書記憶容量 | ディスク:200ページ,フロッピー:60ページ/枚(40字×40行/ページ) | フロッピー:150ページ/枚(同左) | ||
表示装置 | 12型 448文字(32字×14行) | 12型574文字(41字×14行) | ||
印刷 | ドットマトリックスプリンタ 35字/秒(単票装置オプションあり) | |||
文書伝送 | なし | 1200〜9600bps(公衆/専用回線,構内回線) |