【日本電気】 ACOS-4/XVP PX

ACOS-4/XVP PX(eXtended multi Virtual Processor Parallel eXtended)は,日本電気の中〜大型汎用機用オペレーティングシステムであり,1994年7月に発表され,1994年10月から出荷された.
ACOS-4/XVP PXは,オープンシステムとの連携,最先端ハードウェア技術による大幅なプライスダウン,パラレル処理やクラスタ技術といったメインフレームアーキテクチャ変革による優位性の向上を行ったものである.1994年7月に発表されたPX7500をはじめとする,PX7800,PX7600SV,PX7800SVのパラレルACOSシリーズに搭載された.
新しく採用したアーキテクチャ,および主な機能についての特長は以下の通りである.

1.パラレル処理
業務処理分野で重要となるオンライントランザクション(OLTP),バッチ,データベース処理にそれぞれ新たに並列処理を導入し,新しい情報処理基盤を提供した.
(1)トランザクションの負荷分散
複数のホストから構成されるクラスタシステムにおいて,各ホスト間の負荷バランスをとりながらトランザクションを振り分け,並列実行させることで,システム全体のトランザクションのスループットを向上させる,パラレルOLTPを提供した.
パラレルOLTPでは,各ホストの負荷状況に応じてトランザクションの振分けを行う「負荷バランス制御」,入力トランザクションキューをホスト間で共有させる「グローバルトランザクションキュー」,ホスト障害の際に仕掛かり中のトランザクション処理を別ホストでリカバリ・再実行する「フォールトトレラント性」にて,トランザクションの負荷分散を実現した.


図1.パラレルOLTP

図1.パラレルOLTP



(2)ジョブの負荷分散・並列実行
クラスタシステムにおいて大量のバッチジョブを効率よく実行させる,パラレルバッチ機能および,ジョブステップを並行に動作させるパラレルジョブステップ機能を提供した.
パラレルバッチでは,業務DB/ファイルが共有されたクラスタシステムにおいて,各ホストの負荷を監視し,最も負荷の低いホストにバッチジョブをスケジュールする「グローバルバッチスケジューラ」にて,ターンアラウンドタイムの改善を実現した.
パラレルジョブステップでは,1つのジョブ内の後続ステップへのデータの引継ぎにおいて,先行ステップが全データ件数を出力し終える前に,後続ステップがデータの入力を開始できる「同期型一時ファイル」を使用してジョブステップを並列に動作させることで,ターンアラウンドタイムの改善を実現した.


図2.パラレルジョブステップ

図2.パラレルジョブステップ



(3)パラレルSQL
大規模データベースを並列に処理するパラレルSQLを提供.
パラレルSQLは,リレーショナルデータベースに対する検索要求を分解し,複数の検索単位として並列実行することにより,ターンアラウンド/レスポンスを向上させた.

2.クラスタシステム(ファイル共有型並列システム)
パラレルACOSによるクラスタシステムは,複数のホストを高速なホスト間接続機構(MSCF:Multi System Control Facility)で接続した構成により,フォールトトレラント,ホスト間の負荷分散,単一システムイメージなどを実現した.
パラレルACOSによるクラスタシステムの特長は以下の通り.
  • オンライン,バッチ運用において,1つのホストで障害が発生しても,残りのホストで運用を継続する縮退運転機能により,フォールトトレラント性を実現
  • 各ホスト間でのCPU負荷バランスを自動的に制御し,システムを安定かつ効率的に動作
  • クラスタシステム全体を停止せずに,ホスト単位で,OS保守,およびハードウェア増設・保守が可能
  • シングルシステムと同様の操作性でクラスタシステム全体の制御・管理が可能

図3.クラスタシステム

図3.クラスタシステム



さらに,クラスタシステムでの要の装置であり,ホスト間で共有される資源の排他制御に利用されるマルチシステム制御装置MSCP(Multi System Control Processor)の障害に備え,自動的に故障装置を切り離して予備装置を組み込む機能を提供し,フォールトトレラント性の向上を実現した.

3.オープンシステム連携
端末,ネットワーク,サーバマシンのオープン化に対応し,7つの処理領域においてオープンシステムとの連携機能を提供し,オープンシステムとパラレルACOSを一体化したシステムの構築を可能にした.


図4.7つの処理領域でのオープンシステム連携

図4.7つの処理領域でのオープンシステム連携



(1)トランザクション連携
通信プロトコルTCP/IP上で独自プロトコル(開放型OLF/TPプロトコル)を提供し,パソコン,サーバマシンなどのオープン製品とのトランザクション連携を実現した.
(2)ジョブ連携とデリバリ連携
オープンサーバからのバッチジョブの投入/監視/操作を行い,オープンサーバに接続されているプリンタにデリバリを出力する機能を提供した.
ジョブの連携では,NQSプロトコルを採用した.さらに,オープンサーバとパラレルACOSとの間で,簡単にジョブネットワークが構築できる機能も提供した.
デリバリ連携では,デリバリファイルをFTPするのではなく,パラレルACOSのスプールデータをオープンサーバに送信する形態をとり,業務アプリケーションを変更させることなく実現した.
(3)データベース連携
オープンシステムへ高速にデータベースを配信する機能と,リモートのデータベースにアクセスする機能を提供した.
データベース配信では,パラレルACOS上のデータベースからのデータ抽出,データの転送,オープンサーバ上のデータベースへのデータ格納を,連動して自動で行う機能を搭載した.
リモートデータベースアクセスでは,ODBCに対応するWindowsアプリケーションからパラレルACOS上のRIQS?Uデータベースを直接アクセスできるサーバ機能と,逆に,パラレルACOS上のアプリケーションからオープンサーバ上のデータベースを直接アクセスできるクライアント機能を搭載した.
(4)ファイル連携
パラレルACOSで,UNIX互換のファイルシステムやNFS互換のファイルサーバ機能,ネットワークOSのサーバ機能を提供し,パラレルACOSをファイルサーバとして利用するニーズに対応した.

UNIX互換ファイルシステムでは,パラレルACOS上のアプリケーションからファイルをアクセスできるアプリケーションインターフェースをC言語で提供した.また,NFS互換のファイルサーバ機能を搭載することで,UNIX上のアプリケーションからの利用を容易にした.
ネットワークOSの対応では,代表的なネットワークOSである,LAN ManagerやNetWareのサーバ機能を搭載することで,パソコンからの利用も可能とした.
(5)運用連携
パラレルACOSの操作や監視をUNIX上のGUI画面で行う機能を提供した.
GUI画面からの操作は,パラレルACOSに関する操作コマンドの専門的な知識を不要とし,状態もグラフィカルに把握することができ,操作性・視認性の向上を実現した.
(6)プログラム連携
国際標準のOSI-TPを利用して,他のホストとの対等通信を可能としたプログラム間の連携機能を提供した.
4.基盤アーキテクチャの変革
既存のユーザ資産を継承し,低価格を追求した先端ハードウェアによるパラレル処理基盤を提供するために基盤アーキテクチャを大幅に変革した.


図5.先端ハードウェアを構成したパラレルACOS

図5.先端ハードウェアを構成したパラレルACOS



(1)CMOSプロセッサによる高並列TCMP(Tightly Coupled Multi-Processor)
パラレルACOSは,パラレルプロセッシングの実現方法として,メモリ共有型の並列プロセッサ方式と,それをファイル共有で結合したクラスタシステムを基本アーキテクチャとして採用した.
低価格ワンチップCMOSプロセッサ「NOAH」を最大32台接続した高並列TCMPにより,パラレルバッチ,パラレルSQL,パラレルOLTPを効率よく動作させる並列処理基盤を提供した.
(2)FBAディスク
ディスクアーキテクチャとしてFBAを全面的に採用した.これにより,省スペース,低価格なディスク装置を提供するだけでなく,OSを含むシステム全体での高速なアクセスを実現した.また,FBAディスクの導入を容易にするため,従来のJCLやアプリケーションインターフェースを継承し,さらに,CKDディスクからのデータの一括移行機能を提供した.
(3)新通信管理
最新のハードウェア/ソフトウェア技術を活かした低価格,高性能,高機能なフロントエンドプロセッサを提供し,TCP/IPやOSIなどのオープンなネットワーク環境や高速通信網に対応した.
また,クラスタシステムへの対応として,トランザクション負荷バランシングとフォールトトレラント運用を実現する負荷分散型通信機能と,ATSS,VISなどのサブシステムや業務アプリケーションがクラスタ構成を意識せずに利用できるパススルー型通信機能を搭載した.


 
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