【三菱電機】 UTS/VS

1974年に発表された汎用コンピュータ COSMOシリーズ向けに三菱電機が開発したオペレーティングシステムで,MELCOM-7000のオペレーティングシステムを継承し,機能を強化・拡張したものとなっている.MELCOM-7000で定評のあったバッチ処理,会話形のタイムシェアリング処理,広範なコンピュータ・ネットワークの構築を可能とするリモート処理,センサ・ベースのクリティカル・リアルタイム処理の機能強化に加え,オンライン・データベースの即時アクセスと更新を行うオンライン・トランザクション処理がサポートされ,この5つのモードを同時並行的に処理できるようになっていた.

1. 処理モード
(1)バッチ処理
バッチジョブは,システム生成時に作られた最大16個までの論理的なパーティションで並行して実行される.各パーティションは各々の独立した仮想空間を持っている.パーティション間の実行の切り替えはタイムスライスを基本としている.
(2)タイムシェアリング処理
最大128台までの会話型端末をサポートする.通信回線は専用回線,公衆回線のいずれでもよい.バッチと同じ機能が使用でき,FORTRAN IV,COBOLなどもそのまま使用できる.FORTRANやCOBOLには会話型のデバッギング・パッケージが用意されている.会話型プロセッサとしては,BASICとAPLがある.バッチジョブの投入や状態の問合せ,オペレータとの会話もできる.
(3)リモート処理
通常のリモートバッチ端末(RBT)と,データ処理機能を有するインテリジェント・リモートバッチ端末(IRBT)をサポートしている.IRBTでは,IBM HASPマルチリービング方式を採用しており,HASP伝送制御手順を持つコンピュータとネットワークを構築できる.
(4)リアルタイム処理
リアルタイム・プログラムは,主記憶に常駐させることができ,ハードウェアからの割り込みに対して,スケジューラの介入なしにハードウェアにより数マイクロ秒で実行を開始させることができる.
(5)トランザクション処理
端末からメッセージを投入するだけで,データ収集やデータベースの内容検索,更新,レポート作成などを自動的に行う各種オンラインシステムを自在に構築きる.また,処理の種々の段階における入出力メッセージのジャーナルを自動的にとることができ,障害回復や統計処理に活用することができる.

2. OSの機能
(1)メモリ管理
ユーザ・プログラムは,ページ(2,048バイト)単位に管理されている主記憶の空き領域に入れられる.プログラムが指定するメモリアドレスは仮想アドレスであり,「メモリ・マップ」というハードウェア機構により,プログラム実行時に主記憶の実アドレスに変換される.



仮想空間は,ユーザ・プログラムごとに空間全体が提供されるマルチ・バーチャルスペース方式である.先頭領域はモニタ(オペレーティングシステム)が占め,これは実メモリでも先頭を占める.続いて,オペレーティングシステムの使うテーブルやバッファあるいはオペレーティングシステムのオーバーレイ・ルーチンの領域があり,その後にユーザ・プログラムの領域がある.



(2)リエントラント・プロセッサ
FORTRAN,BASIC,ファイル・ユティリティ,デバッガなどは,リエントラントに作成されている.これらは,仮想空間の最後にある特別プロセッサ領域に置かれる.リエントラント・プロセッサは,主記憶に1つあれば複数ユーザで使用できるので,主記憶の利用効率を高めることができる.
(3)タスクのスケジュール方式
実行の開始されたプログラムはタスクとして管理され,そのステータスに応じて,30数種類のタスク・ステータス・キューのいずれかに繋がれており,キュー間の優先度,キュー内の優先度に従ってCPUで実行される.実行しようとしたプログラムが主記憶にない場合,二次記憶装置より主記憶へスワップ・インされる.このとき,主記憶に空き領域がなければ,最も優先度の低いプログラムが二次記憶装置へスワップ・アウトされる.
(4)ファイル管理
プログラムがアクセスするファイルには,シーケンシャルな構造のコンゼキュティブ・ファイル,レコードごとにキーを持ったキード・ファイル,物理的に連続した領域が確保され,物理的なブロック番号を用いてアクセスするランダム・ファイルがある.

  
UTS/VS解説書