【三菱電機】 MELCOM-7000シリーズ用オペレーティングシステム

1970年に発表された三菱電機の汎用コンピュータMELCOM-7000シリーズ向けに,バッチ処理,リモートバッチ処理,オンラインリアルタイム処理,タイムシェアリング処理を同時に提供する程度に応じて,RBM(Real-Time Bach Monitor),BPM(Batch Processing Monitor),BTM(Batch Time-sharing Monitor),および,UTM(Universal Time-sharing Monitor)というオペレーティングシステムが提供された.

RBMは,複数個のリアルタイム処理を同時に行うことができる.これと並行してローカルでのバッチ処理も行うことができる.主記憶の最小構成は64KB(16K語)である.
BPMは,バッチ処理を能率よく行う高度な管理機能を持ち,遠隔地からのリモートバッチ処理や,複数個のリアルタイム処理も同時に行うことができる.主記憶の最小構成は128KB(32K語)である.
BTMは,BPMのバッチ処理,リモートバッチ処理に加え,最大38人が同時に利用できるタイムシェアリング処理を同時に行うことができる.タイムシェアリングの利用者は,端末での会話的処理にて,バッチ処理を要求することができる.主記憶の最小構成は192KB(48K語)である.
UTMは,バッチ処理,リモートバッチ処理,リアルタイム処理に加え,最大128人が同時に利用できるタイムシェアリング処理を同時に行うことができる大規模システム用のオペレーティングシステムである.主記憶の最小構成は256KB(64K語)である.

オペレーティングシステムは,ジョブ管理,タスク管理,ファイル管理,資源管理の機能から構成されており,それぞれ,以下の特徴を持っている.

(1)ジョブ管理
同時に複数個のジョブを処理するマルチジョブを実現している.
カードリーダやリモート端末などから入力されたジョブは,磁気ディスク上の入力待ち行列に入れられる.その後,ジョブスケジュール・プログラムにより,ジョブの優先度に従って実行されるジョブが待ち行列から選び出され,ジョブステップに分解されながら,実行に必要な資源を割り当てられて実行が開始される.実行中のジョブの出力は,いったん磁気ディスク上の出力待ち行列に入れられた後,プリンタ等に出力される.
ジョブの入出力は,シンビオント(Symbiont)により,ジョブの実行と併行同時処理されている.また,複数の入力ストリームと複数の出力ストリームを同時処理できるマルチストリーム方式をとっている.

(2)タスク管理
同時に複数個のタスクが走行するマルチタスクによるマルチプログラミングを実現している.リアルタイムジョブではジョブの実行中に複数個のタスクが同時に存在して動作する.バッチジョブやタイムシェアリングジョブでは,ジョブステップが1つのタスクとなる.タスク・ディスパッチャが,これらのタスクのスケジュールを行い,タスクを切り替えながら実行させている.
(3)ファイル管理
ジョブの扱うデータは,利用者を識別するアカウント番号の下にファイルとして登録される.また,プログラムは,ファイルのエレメントとして扱われ,1ファイルに複数個格納される.
データファイルの編成には,順次アクセス用のコンゼクティブ編成,順次アクセスに加えレコードを識別するキーによるダイレクトなアクセスが可能なキー付き編成,ファイル内のアドレスによるダイレクト・アクセス用のランダム編成の3種類がある.
プログラムで記述する内部ファイル名と,実際のファイルとの結合は,ジョブ制御言語にて行なわれる.
(4)資源管理
主記憶の割り付け方には2通りある.RBM,BPM,BTMでは,主記憶を前もって複数個の領域に分割しておき,各領域に1つのジョブを割り当てていく多重領域分割割り当て(Multi-Partition)の方式を採用している.UTMでは,主記憶を領域に分割せず,ページング動的再配置機構を利用して各ジョブに必要なだけの領域をページ単位で割り付けるページ割り当て(Paging)方式を採用し,この中でも,要求時にページを割り当てるページ要求方式ではオーバーヘッドが大きくなるので,必要なページを一度に割り当てるページロード方式を採用している.
ファイル記憶装置は,コンゼクティブ編成とキー付き編成では,ファイルの増大に合わせて逐次動的に領域を割り当て,ランダム編成では,前もって一度に割り当てる方式を採用している.

言語プロセッサとしては,FORTRAN IV,COBOL 68などの世界最高水準のコンパイラに加え,FORTRANプログラムのオブジェクトを直接主記憶上に作り出し,きわめて高速にコンパイル&ゴーのできるFLAG,リリエントラントなオブジェクトも作成できるリアルタイムFORTRAN IVが提供されていた.また,タイムシェアリング用には,BASIC,APL,タイムシェアリングFORTRANが用意されていた.