【日立】 VOS K

VOS KはM-620/M-630/M-640向け中小型OSであった.コンピュータの専門知識を持たない実務担当部門で利用できるよう使い勝手の向上と高速性を追求した.リレーショナルデータベースを基本機能とし,高速化実現のために仮想データ空間制御方式を採用,プログラム生産性では,COBOLの10倍を実現する第4世代言語EAGLE/4GLを用意した.さらにホストのVOS側でVOS K側の開発・管理・運用ができる部門分散システム(DDC)を実現した.

VOS Kは1988年7月発表,同年12月から出荷を開始した.

VOS Kでは,使いやすくて性能がよく,ネットワークを構築しやすいオペレーティングシステム提供を目的として,次の機能をシステムの基本構造として組み込んだ.

(1)リレーショナルデータベース機能
従来システムではリレーショナルデータベースは索引ファイル,構造形データベースなど多様なファイル機能と併存して使用されていた.このため,どのファイル機能を業務に合わせて選択するかが利用者の重要な決定事項であり,負担となっていた.さらにファイル機能が異なれば同一データを別々のファイルで重複管理しなければならなかった.こうした事態を解決するため,VOS Kではファイル機能をリレーショナルデータベースだけに統一することによって,多機能と使いやすさを実現した.
(2)対話制御機能
コンピュータシステムで業務を操作・実行する場合,対話によるマンマシン形式が使いやすさの点で優れていることが多い.VOS Kでは,対話処理をジョブ実行の基本環境として位置づけ,バッチ処理環境も対話処理環境に一元化した.これにより,システムへの指令が単一のコマンド言語で出せるようになった.
(3)拡張HNA通信制御機能
ネットワークアーキテクチャとして拡張HNAを採用することにより,各種通信網への対応,国際標準への対応,各種ネットワーク利用形態への対応を図り,ローカルネットワークから広域ネットワークまで,利用形態に応じたネットワークシステムを実現した.

 VOS Kは従来の「小規模ホストコンピュータ向けOS」という位置付けに加え,新しく企業の各部門に設置される「部門コンピュータ向けOS」としての役割を果たした.いずれの場合も,実務担当者でも簡単に扱える使い勝手のよさが求められた.
 VOS Kはコンピュータ知識のない実務部門でも利用できるYES(Y:do it Yourself, E:Easy to use, S:high Speed)コンピュータを目標として開発を進めた.
図-1にYESコンピュータの役割としてのVOS Kの位置付けを示す.


図-1「YESコンピュータの役割」

図-1「YESコンピュータの役割」

VOS Kには以下のような特長があった.

特長 説明
Y:do it Yourself
自分の仕事を自分でコンピュータ化するための便利なツールを提供
  • 情報処理部門の生産性を向上する第4世代言語EAGLE/4GL
    EAGLE/4GLはCOBOLと比較して,開発工数・開発ステップ数とも約10倍の生産性を実現
  • 実務部門のOA業務を支援するシステムOA HOAPSERV
E:Easy to use
システムの立ち上げ・運転・操作,データ入力やホストコンピュータ利用などすべての面で操作性のよいシステムを実現
  • 統一かつ体系化されたコマンド言語
  • 論理ボリューム,階層化ディレクトリ構造を持つファイルシステム
  • VOS3でのVOS Kの業務開発/運用機能
  • 自習システムSTEP
    VOS Kを自習するためのプログラム,マニュアル,データが一体となったシステムで2日間程度で習得が可能
S:high Speed
必要な情報をすばやく検索し,ワークステーションへ応答できる高性能システムを実現
  • 高性能RDBを実現する仮想データ空間制御 VDSA
    高性能化するハードウェア資源(CPU,メモリ)に対応し,従来のディスク依存型の制御方式をCPU,メモリ依存型にしたもの
  • ワークステーション応答性能改善

図-2にEAGLE/4GLの効果を示す.開発工数,開発ステップ数とも約1/10となっている.


図-2「EAGLE/4GL の効果」

図-2「EAGLE/4GL の効果」

図-3はE(Easy to use)を実現する手段の1つとして提供していた自習システムSTEPを示したものである.これはVOS Kを自習するためのプログラム,マニュアル,データが一体となったシステムで,約2日間で習得することが可能であった.


図-3「VOS K自習システムSTEP」

図-3「VOS K自習システムSTEP」


 
VOSKのマニュアルの表紙VOSKのマニュアルの記述例