BMOSは1977年12月に発表されたFACOM Bm用のOS(オペレーティングシステム)である.富士通,ユーザック電子工業(後のPFU)および内田洋行の協力によって開発された.FACOM Bmと同一機のUSAC 820はユーザック電子工業が製造し,内田洋行が発売した.
当時,中小企業や事務所での現場指向のデータ処理の必要性が高まり,DDPS(Direct Data Processing System)がより強く求められていた.FACOM BmはDDPSの最前線を担ったオフコンであった.ちなみにBmの名称はBilling & Branch Machineに由来する.FACOM Bmを特徴付けるのは次の3つの利用形態であり,BMOSはその狙いを支える機能を提供した.
- (1)ビリングコンピュータ
- 現場でのビリング(伝票発行)処理のために,次のような特徴的な機能が用意された.
- 伝票と元帳の同時記帳
- 在庫等の問合せ
- 在庫その他の即時更新
- 伝票発行と同時に取引データのフロッピーディスクへの出力
- (2)ブランチコンピュータ
- ホストコンピュータとオンライン接続しないで,フロッピーディスクやカセットテープに記録した現場のデータをホストコンピュータにて一括処理する使い方.スタンドアロンで業務に即したデータの入力処理ができる機能が求められた.
- (3)ターミナルコンピュータ
- ホストコンピュータのインテリジェントターミナルとしての用途.現場で即時処理されたデータを公衆回線あるいは特定回線を通じてホストコンピュータに速やかに伝送する機能が用意された.
FACOM Bmと同時期に提供されていたFACOM Vシリーズに向けては,オフコンとして汎用的な機能を提供するために,UNIOSと呼ばれる本格的なOSが用意された.一方,ビリングマシン並みの手軽さを目指したFACOM Bmは,USAC 720/10の基本ソフトウェアとUNIOS/F1の流れを受けつつ,基本的なOS機能はコンパクトにし,本機を使用して伝票発行等の業務を行うエンドユーザが使いやすい機能の装備を重視した.後の「ワークステーション機能を備えたオフコン」の萌芽であった.
- (1)制御プログラム
- FACOM Bmでは,多くの基本機能(入出力制御,プログラムローダ,オンライン制御,等)がファームウェア化されており,制御プログラムとしては,ファイルコントロール,メッセージコントロール,プログラムデバッグツール,等の比較的シンプルな構成であった.
- (2)言語処理プログラム
- エンドユーザが容易に伝票発行処理やバッチ処理のプログラムを作成できるようにした言語処理プログラムとしてBOL-1 (Billing Oriented Language-1)が提供された.BOL-1の特徴を示すものとして以下があった.
- 記述の簡略化
- プログラムの標準化
- データの標準化
- プログラム保守が容易
- オペレーションを標準化しやすい
- (3)サービスプログラム
- エンドユーザによる現場でのデータ処理を簡単に行うためのユーティリティが用意された.
- システムユーティリティ
フロッピーディスクやカセットテープ等のイニシャライズ,ファイル領域の確保,内容の印刷やプログラムのフロッピーディスクへの格納をサポートする機能の集まり. - サービスユーティリティ
ファイルの作成,修正,更新,複写および確認を行うファイルジェネレータ,そしてファイルの分類/併合を行うSORT/MERGEである. - 言語サポートユーティリティ
作成した実行プログラムの登録や削除等を行うプログラム,そしてソースプログラムの登録,修正,リスティング等を行うライブラリエディタである.
- システムユーティリティ
- (4)オンライン処理プログラム
- 簡単なパラメータの設定だけで容易にオンライン処理プログラムを作成できるONLGE(Online Generate Utility)が提供された.表-1にONLGEの機能を示す.
回線 | 機能名 | 機能概要 |
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公衆回線 | オンライン機能1(LINE 1) | 入力ファイルのデータを,公衆回線を通して送信する |
オンライン機能2(LINE 2) | 公衆回線を通して送られてくるデータを受信し,出力ファイルに書き出す. | |
特定回線 | オンライン機能3(LINE 3) | 入力ファイルのデータを,特定回線を通して送信する |
オンライン機能4(LINE 4) | 特定回線を通して送られてくるデータを受信し,出力ファイルに書き出す. |
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これら以外に,応用プログラムの開発コストの削減と開発期間の短縮を狙いとしたライブラリが提供された.これは業種/業務別のユーザ事例を集大成したものであった.このような考え方によるパッケージは,FACOM VシリーズではCAPSEL(Customer Applications Service Library)の名称で提供され,FACOM BmではSAMPLE(Standard Application Making Program Library Editor)の名称で提供された.図-1にSAMPLEの体系を示す.