富士通信機製造(現富士通)の事務用小型コンピュータで,1965年3月に発表された.経済性(最小構成で1日の費用が1万円)と使いやすさを主眼に開発され,コンピュータユーザの裾野を拡大した.
FACOM 230-10は,当時の小型機にはない機能(かな文字コボル,ソート機能,ソフトウェアページング,ビルディングブロック方式による拡張)を有し,小規模の事務計算だけでなく,中型・大型コンピュータのブランチコンピュータとしても広く利用された.発売後,爆発的な人気を得,急激な需要に対応するため同社長野工場が建設され,5年余りで,同社で初めて製造台数が1,000台を超えるベストセラーとなった.
以下にFACOM 230-10の特徴的な機能を列挙する.本機の主要諸元については「表 FACOM 230-15と当時の既存機種との比較」を参照されたい.
- (1) 設置の容易性を考慮し,単相100ボルトの電源で動作.
- (2) 当時としては高速なサイクルタイム2.0μsの磁心記憶を採用.最小容量4キロバイト,最大容量8キロバイト.
- (3) FACOM 230-10用の補助記憶装置として開発された,容量64キロバイト(65,536バイト)のドラムファイルを装備.同ファイルは512バイトのストリングと呼ばれる転送単位128本から成る.
- (4) 必要最小限の機能に絞り込まれた,簡素な本体前面の操作パネル.
- ‐スイッチ: 読取終了符号の指定スイッチとASW(Alternation Switch)の2個
- ‐キー: 電源,待機/稼働,命令読込,計算開始,一時停止,解除の6個
- (5) 標準プログラミング言語として,「かな文字コボル」を装備.同言語は世界共通のCOBOLを富士通が日本向けに手を加えたもの.日本語項目名を使用でき,リアルタイムプログラミング機能やドラムファイルへのランダムアクセス機能をもつ.