電気試験所ではETL Mark VIトランジスタ計算機を1965年3月に完成した.1959年に計画が開始され,当時の海外の超高速計算機を凌ぐものを実現するため予算も1億円とMark IVに比べると20倍になり,トランジスタによる高速基本回路,高速磁心記憶装置,ページアドレス方式,高速大容量固定記憶装置,高度な先行制御方式,高速演算回路,割り込み技術を駆使した入出力制御方式など,多くの新技術が開発された.高速基本回路は,トランジスタ電流スイッチとエミッタフォロワの組合せに2相のクロックパルスを適用したダイナミック回路である.論理の伴わない短時間の遅延には電磁遅延線が用いられた.これらの技術は少し変形して日立製作所のHITAC 5020に使用された.