【日立】 HITAC 5020

科学技術計算あるいは科学的経営計算を主な目的とし,事務計算にも適するよう設計,製造された日立製作所独自の技術によって開発された大型汎用電子計算機である.

1960年4月,東大の真空管式計算機TACの中心的設計者であった村田健郎中澤喜三郎が日立製作所に入社し,HITAC 5020の開発が始まった.HITAC 5020の命令方式の基本となったのは「FABM」方式の考え方であり,F(Function),A(A-reg,アキュムレータ),B(B-reg,インデクスレジスタ),M(Memory)で,A,B,Mを統一的に扱うことを意図していた.すなわちAB両レジスタは同一であり,0-15番地にメモリとしてのアドレスを持つという考えである.方式設計と並行して1960年7月から基本回路の検討が開始され,12月には,ダイオード論理とエミッタフォロワと電流切替型の再生増幅器という方式が決定され,ドットメサ型のHS-510を用いて18MHzで動作できる見通しが得られた.

1961年から設計が開始され,1963年5月に第1次の試作が完了した.その後チャネルの設計試作が行われ,1964年システムとしての試作が完了した.1965年製品第1号機が京都大学に納入され,ついで電電公社(現NTT),東京大学に納入され国産初の大型機の誕生ということで大きな注目をあびた.


HITAC 5020チャネル部筐体コアメモリスタックプレーン
コアメモリ遅延線レジスタ遅延線を含んだフリップフロップ
 
フリップフロップメモリ用センスアップ回路