【富士通】 FACOM VP-100シリーズ

富士通のスーパーコンピュータ.1982年7月に同社初のスーパーコンピュータとして,ベクトルプロセッサFACOM VP-100およびFACOM VP-200が発表された.これらは,FACOM 230-75APUの技術を活かして,より一層の高性能化,使いやすさと汎用コンピュータFACOM Mシリーズとの親和性を狙って開発され,以下の特徴を持つ.

(1)実際のFORTRANプログラムの解析に基づきVPアーキテクチャを策定
単純な四則演算のみならず,データの並び替え,条件付演算の高速化に重点が置かれた.
(2)ベクトル命令を高速演算パイプラインで実行し,VP-200で最大性能500 MFLOPSを実現
(発表後571 MFLOPSにエンハンス)
(3)高速半導体テクノロジと高密度実装による高速化の実現
  • ゲート遅延時間350ps,チップ当たり400および1300ゲートECL LSIとアクセス時間5.5nの高速RAMの最新半導体テクノロジの採用
  • LSIおよびRAMを121個高密度実装可能なプリント板MCC(Multi-Chip Carrier)を新開発
  • 50cm立方のスタック構造の採用によりLSI間配線を短縮
(4)世界に先駆けてスタティックRAM(アクセス時間55nsの64キロビットSRAM)を主記憶装置に採用し高いデータ転送能力を実現

1984年1月にFACOM VP-100シリーズ1号機(FACOM VP-100)が,名古屋大学プラズマ研究所で稼働した.
後に,性能を強化した上位機FACOM VP-400が追加され,世界で初めて1GFLOPSを超えた処理性能を実測した.また,下位機FACOM VP-50,FACOM VP-30の追加により市場を拡大した.これらFACOM VP-100シリーズの改良機FACOM VPシリーズEモデルが1987年7月に発表された.

FACOM VP-100シリーズ諸元
  VP-30 VP-50 VP-100 VP-200 VP-400
発表時期 1986年9月 1985年4月 1982年7月 1985年4月
最大ベクトル性能 (MFLOPS)
( )内は発表後にエンハンス
110 142 250
(→266→285)
500
(→533→571)
1142
ベクトル
処理装置
命令数 スカラ命令 195個
ベクトル命令 83個
レジスタ 汎用レジスタ 16個(32bit)
浮動小数点レジスタ 8個(64bit)
ベクトルレジスタ 32KB 64KB 128KB
マスクレジスタ 512B 1KB 2KB
バッファストレジ容量 32KB 64KB
主要素子 400,1300ゲート/チップ 遅延時間350ps/ゲート ECL LSI
アクセスタイム 5.5ns 4Kbit/モジュール RAM
主記憶装置 メモリ素子 アクセスタイム55ns 64Kbit スタティックRAM
容量 32/64/128 MB 64/128/256 MB
インターリーブ数 64/128/128 ウェイ 128/256/256 ウェイ
最大搭載チャネル数 32

(注) 上記の諸元は発表時のもので,その後の改良で変更されている場合がある.


FACOM VP-400 CPUFACOM VP-50システムFACOM VP-100シリーズ LSIチップ当たり1300または400ゲートの回路を有するECL LSI(中央手前,富士通沼津工場池田記念室に展示)
  
FACOM VP-100シリーズ 3次元スタック最大13/15枚のMCC(Multi Chip Carrierの略で,LSIを最大121個搭載可能なプリント板)を収容可能な3次元スタック構造(写真はVPシリーズEモデル用で15枚収容).