パナファコム(1987年よりPFU)によって開発され,1977年3月に発売された16ビットマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)の学習キットである.当時主流だった8ビットのマイクロコンピュータに対し,16ビットのマイクロコンピュータの普及を目指して開発された.本体価格は98,000円.当時,マイクロコンピュータはマイコンとも呼ばれた.
PANAFACOM Lkit-16(以下,Lkit-16)に搭載されたCPUは,パナファコムが独自に開発した国内初の1チップ・16ビットマイクロコンピュータMN1610である.MN1610は1975年4月にPANAFACOM-16Aの名称で発表され,同年8月に完成した.完成品は,1975年のWESCON(Western Electronic Show and Convention.サンフランシコ開催)とIEEE(トロント開催)に出展された.世界的にも1チップの16ビットマイクロコンピュータが登場したのはMN1610と同じ1975年である.
16ビットのマイクロコンピュータを搭載することで,Lkit-16は従来の8ビットマイクロコンピュータに比較して,速度が約2倍,使用メモリ量が約6割で済むケースもあるなど,優れたコストパフォーマンスを実現した.Lkit-16の主な仕様と特徴的な機能は次のとおり.
主要なハードウェア仕様
- CPU:MN1610(クロック2MHz,16ビット並列処理)
- ROM:1KW(最大2KW)
- RAM:0.5KW(最大1KW)
- I/Oポート:サブチャネルアダプタMN1630(データ幅8ビット)
- その他:オーディオカセットやカラーグラフィックが使えるインタフェースを装備
特徴的な機能
- 簡易アセンブラ入力用のキーボード
48個のアセンブラキーを使って直接入力できる1ステップアセンブラによる容易なプログラム入力 - デバッグが容易にできるコンソール機能
プログラムの1ステップずつの実行,あるいは実行停止位置や停止タイミングを設定してのチェックができた - データ入出力用のオーディオカセットインタフェース
- 簡易プログラミング言語Tiny BASIC
Tiny BASICはインタプリタ型の簡易プログラミング言語.当時のユーザの間で人気があったこの言語の搭載は,エンジニアの卵からホビーとしてのマイクロコンピュータに興味を持つアマチュアまで,コンピュータ知識の普及拡大に貢献した