【大阪大学】コンピュータグラフィックスシステムLINKS-1

LINKS-1は,阪大工学部の大村皓一,白川功,河田亨の教官と延50名の学生からなるグループで試作したコンピュータグラフィクス(CG)用マルチマイクロコンピュータシステムであり,1982年10月末試作完成以来,多数のリアリティの高い動画制作に寄与した.

本システムの特長は次のように要約できる.

  • (1) 各ユニットコンピュータ(UC)は同一ハードウェア構成であって,1台のルートコンピュータ(RC)と複数台(最大256台)のノードコンピュータ(NC)からなる疎結合の星状接続構成をとる. (図1参照)
  • (2) UCは制御ユニットのZ8001に加え,浮動小数点演算を高速に行う算術演算ユニットiAPX86/20を備えたMPU構成である. (図2参照)
  • (3) RCと各NC間の通信はシリアル回線のほかに,大量画像データの高速転送用メモリ交換ユニット(IMSU)を用いる.IMSUは1対のメモリブロックを持ち,これを交換することによりデータ転送を行う.
  • (4) 各UCに1 MBのメモリユニットを持たせ,NCが処理中にRCとの通信の必要性を極力少なくし,アクセス競合を避け,効率的な並列処理を実現している.
  • (5) フレームメモリ(FM)は1,024×512画素単位にX,Y方向に拡張可能であり,各NCが出力する画素データはFIFO型データコレクタで集め,FMに書き込む.このためNCの画素データはアクセス競合なしにFMに出力できる.

3次元画像生成の中核は,与えられた視点,光源,物体の位置から表示表面を構成する各画素の輝度を計算することである.本システムは視線探索法を用い,画素ごとに独立に並列計算可能な画像生成手法を実行するためのものであり,高速画像生成用に開発した新しい専用ソフトウェア手法により,リアリティの高い画像生成を実用的な速度で実現した. (図3,図4参照)

1985年開催の「つくば博」に富士通パビリオンで上映された世界初のフルCG全天周ドーム型3D映像は,LINKS-1(NCを256台使用)を使用して制作された.

(情報処理学会歴史特別委員会編「日本のコンピュータ史」(2010年,オーム社発行) pp.194-195より編集)


図4 再帰的輝度計算

図4 再帰的輝度計算

図1〜図4
(出典: 河田,白川,大村; ”コンピュータグラフィックの現状”, システムと制御,vol. 27, no. 6, pp. 9-13, 1983.)


 
コンピュータグラフィックスシステムLINKS-1全景LINKS-1の生成画像
(出典:河田,白川,大村:”コンピュータグラフィックスのためのマルチマイクロコン ピュータシステム”,病態生理,vol. 3, no. 9, pp. 739-749, 1984.)