【日本電気】 ACOS-4/i-PX

ACOS-4/i-PX(internet - Parallel eXtended)は,日本電気の中〜大型汎用機用オペレーティングシステムであり、2000年11月に発表,出荷された.
ACOS-4/i-PXは,メインフレーム上に蓄えられた企業情報資産をインターネットから有効に活用し,本格的なインターネットビジネスへと進展させるために開発された.ACOS-4/i-PXは,パラレルACOSシリーズの最先端ハードウェアテクノロジを活用し,将来に向けた高い拡張性を保持する「スケーラブルHA基盤」,データ活用の新しいソリューションを提案する「ストレージ基盤」,インターネットをシームレスに連携する「インターネット基盤」を提供した.2000年11月に発表されたi-PX7600および,2001年6月に発表されたi-PX7800のパラレルACOSシリーズに搭載された.
新しく採用したアーキテクチャ,および主な機能についての特長は以下の通りである.


図1.ACOS-4/i-PXの主な強化

図1.ACOS-4/i-PXの主な強化


1.スケーラブルHA(ハイアベイラビリティ)基盤
ACOS-4/i-PXでは,スケーラブルHA基盤を強化し,パラレルACOSシリーズの機能と性能を最大限に引き出した.具体的には,データ量や処理量に応じて,段階的にシステムを拡張可能とするスケーラビリティを一層強化すると同時に,万一の障害の際,システム全体の停止や性能低下を起こさぬよう可用性を強化した.
(1)64ビットアーキテクチャへの対応
拡張性強化の1つとしてアドレスの表現に使用するビット数を拡張し,主記憶と仮想記憶の諸元を拡大した.これにより,大容量の主記憶や巨大な仮想記憶が使えるようになった.
特に,主記憶上に配置されるOSの各種バッファは,大容量にすることでバッファヒット率が向上し高性能化が可能となった.
また,主記憶上に仮想のディスク領域(メモリディスク)を生成して,通常のディスク装置と同様のアクセスができる機能を提供した.メモリディスクは高速アクセスを必要とするデータソートなどに利用することで,業務のスループット向上が可能となった.
さらに,ジョブあたりのユーザ空間を最大512メガバイトから最大1ギガバイトまで拡大した.これにより,大きなユーザプログラムを動作させることが可能になった.


図2.ACOS-4/i-PXの64ビット化

図2.ACOS-4/i-PXの64ビット化


(2)クラスタシステム基盤の強化
ACOS-4/i-PXでは,既に提供している「負荷分散型」のクラスタシステムに加え,「業務分散型」のクラスタシステムを提供した.業務分散型クラスタは,業務ごとに稼動システムを固定する形態で,既存システム(シングルホスト)からの移行が容易でありながら,拡張性・高可用性にも優れたシステムを構築できる.稼動業務に対して別ホストの待機業務を起動しておくことにより,業務障害時の高速切替を実現した.

2.ストレージ基盤
ACOS-4/i-PXでは,SAN対応ストレージ製品であるiStorageシリーズを活用したストレージ基盤を提供した.
(1)ストレージ統合
パラレルACOSおよびオープンサーバのストレージ統合環境を提供し,複数のサーバにばらばらに格納していたデータの管理コスト(バックアップ,所在管理など)が減少し,TCO削減を実現させた.
(2)統合ストレージ管理
ストレージを統合的に管理するストレージ管理ソフトウェアiStorageManagerを提供した.iStorageManagerでは,複数のiStorageを一元管理し,構成管理,障害監視,性能監視を行う機能を搭載した.
(3)データレプリケーション
同一ストレージシステム内,または,異なるストレージシステム間で,業務ディスクの複製を瞬時に作成するデータレプリケーション機能を提供し,以下のようなさまざまな用途に活用された.
  • 複製ディスクを使ってバックアップすることで,オンライン業務とバックアップとを並行して実行できるようになり,オンライン停止時間の短縮および,バックアップの効率化を実現した.
  • 複製ディスクを使って業務開発を行うことで,本番業務のデータを利用した評価が容易に行えるようになり,業務アプリケーションの品質の早期安定化を実現した.
3.インターネット基盤
ACOS-4/i-PXでは,従来業務をそのまま生かしつつ,最新のインターネットテクノロジーに対応した業務強化を実現するための機能,インターネット基盤iPackageを提供した.


図3.ACOS-4/iPackageのコンセプト

図3.ACOS-4/iPackageのコンセプト


iPackageでは主に以下の3つをコンセプトとしており(図3),いずれも,パラレルACOSのフロントエンドにオープンサーバを配し,最新インターネット技術を活用するなど業務レベルの強化を実現した.
(1)既存業務のWeb化
パラレルACOS上の基幹業務をWebComputingで活用するためのコネクタ技術を提供した.基幹業務の入出力メッセージをHTML,XML,CORBAに変換するパッケージ製品や,オープンサーバ上のアプリケーションに連携するインターフェース製品を用意した.
基幹業務の入出力メッセージは,OLF/TPによって透過的にオープンサーバ上で処理でき,基幹業務の入力・出力メッセージにアプリケーション処理を加えることで,従来のETOSベースの基幹業務を強化することができる.
(2)DBアクセス
パラレルACOS上の基幹業務で使用していたデータに,オープンサーバからダイレクトにアクセスさせる機能を提供した.RIQSデータベースを,ODBC/JDBCあるいはOracleインターフェースにて,オープンサーバからダイレクトにアクセスできる製品と,VSASファイルやADBSデータベースをSQLにてオープンサーバからダイレクトにアクセスできる製品を用意した.これらの製品により,パラレルACOSをDBサーバのように利用でき,オープンサーバからの基幹データの活用を容易にした.
(3)DB転送
パラレルACOS上の基幹業務で使用しているRIQSデータベースやVSASファイルを,オープンサーバに転送して独立利用する機能を提供した.基幹業務に影響を与えず,各拠点の部門サーバに転送することで,基幹データベースの内容を戦略分析やデータ入力業務などに活用できる. DB転送の形態として,全データを一括で転送する形態と,更新があったデータのみ差分で配信する形態があり,更新差分のみを配信する形態では,最新データを極力リアルタイムに反映させることができ,より強力な情報系システムを実現できる.また,オープンサーバからパラレルACOSのRIQSデータベースにデータを集信する機能も提供し,基幹データの相互活用のニーズに対応した.


 
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