【三菱電機】 MELCOM-3100シリーズ用テープ・オペレーティングシステム

1966年に発表された三菱電機のMELCOM-3100シリーズ用に,モデル10Tオペレーティングシステム,モデル10PTオペレーティングシステム,および,モデル30Tオペレーティングシステムが提供された.これらは,磁気テープを外部メモリとしたオペレーティングシステムであり,MELCOM-1530で築き上げてきたシステム・プログラムを体系的に整理し,充実させたものとなっている.

1. モデル10Tオペレーティングシステム

モデル10Tオペレーティングシステムは,カード入力のシステムで,標準的なハードウェア構成は,主記憶24K字,タイプライタ,カードリーダ,カードパンチ,ラインプリンタ各1台,磁気テープ装置4〜8台である.カードパンチなしでも動作する.
オペレーティングシステムは,コントロール・プログラムとプロセッシング・プログラムとから構成される.コントロール・プログラムは,オペレーティングシステムの中枢であり,システム・スーパーバイザ,ジョブ・プロセッサ,およびデバギング・ルーティンからなる.これらは,プログラムやデータのメモリへの出し入れ,実行の制御,割り込みや異常事態の処理,ジョブの処理,オペレータとの会話などを受け持つ.プロセッシング・プログラムには,COBOLやFORTRANなどのコンパイラ,MACRO-CORDER,アセンブラ,SORT,MERGEなどのユーティリティ・プログラム,LP,PERTなどの応用プログラムがあり,ユーザ作成のプログラムもこの中に入る.
ソースプログラムは,図で示すように,カードリーダか磁気テープ装置から入力され,コンパイラやアセンブラでプライマリ・オブジェクトプログラムに変換されてカードまたは磁気テープに出力され,PL(Primary Loader)というローダで読み込まれて実行される.また,繰り返し使うプログラムは,SMP(System Maintenance Program)を用いてセカンダリ・オブジェクトプログラムに変換してプログラム・ライブラリ(磁気テープ)に登録しておき,必要時にSL(Secondary Loader)というローダで読み込んで実行することもできる.なお,カードから磁気テープに変換するには,JPP(Job Preparation Program)が用いられる.小規模な構成を考慮し,オブジェクトコードの編集機能は省略されており,オブジェクトコードはアブソリュート形式で出力される.




数多くのジョブを自動的に連続して処理するために,ジョブ・コントロール・ステートメントが用いられた.これは,///で始まり,その後に処理内容を示すオペレーション・コードとパラメータを指定したものである.連続したジョブの例を図で示す.


カードベースの場合の連続ジョブのインプット例

カードベースの場合の連続ジョブのインプット例


2. モデル10PTオペレーティングシステム

モデル10PTオペレーティングシステムは,10Tオペレーティングシステムのカードの代わりに紙テープを使うオペレーティングシステムである.このため,特に,紙テープでのソースプログラム・メインテナンスの支援と,フォーマットの異なる紙テープ装置への対応が行なわれている.
紙テープのソースプログラムを更新するときは,更新部分のみをパンチしたテープを元のソースプログラムの後に接続してコンパイルやアセンブルを実行すればよいようになっている.また,更新を繰り返した場合,ソースプログラムとソースリストがかけ離れてくるのを防ぐため,更新後のソースプログラムをパンチする機能も用意されている.
紙テープ上のソースプログラムなどは,読み取り時に,インプット・コントローラーというソフトウェアが,変換テーブルを用いてコード変換を行っている.種々のコードパターンの紙テープ装置に対応するために,コード変換テーブル・メンテナンスプログラムが用意されている.

3. モデル30Tオペレーティングシステム
モデル30Tオペレーティングシステムは,より大きなシステムをより効率的に運用できるようにしたオペレーティングシステムである.オブジェクトはリロケータブル形式で出力され,大きなプログラムを分割してコーディングし,各オブジェクトコードを結合して実行可能なプログラムを作成することができる.また,主記憶容量の制約を緩和するためにセグメント構造やオーバーレイ構造のプログラムも作成することができる.磁気テープ上にあるプログラムのローディングを高速化するために,プログラム・ディレクトリをプログラム群の前に置くようになっている.


また,SPOOL機能により,中央処理装置での計算処理と,カードリーダやプリンタ,カードパンチへの入出力の同時動作を実現し,システムのスループットを向上させている.SPOOL機能を用いるかどうかは,ジョブ・コントロール・ステートメントで指定する.