東芝が1973年に発売した事務用小型電算機.容量2.45メガバイトの交換可能な磁気ディスク装置と,72字/秒という当時としては高速の低騒音ドットマトリックス方式シリアルプリンタを装備し,小規模システムのセントラルマシン,大規模システムのブランチマシン,オンラインシステムのターミナルなどの用途をターゲットとした.この用途を実現するために,TOSBAC-1350では,キーボード・シリアルプリンタからなり入出力データの編集などの機能を持つインテリジェント端末装置や1km以内に設置されたテンキー端末装置とのインライン接続機能,中央に置かれた大型電子計算機や,リモート端末と通信回線で接続するための通信制御装置などが装備された.
アプリケーションとしては,生産管理システム,一般会計システム,PERT/TIMEのような業務パッケージや農協システムのような業務パッケージを豊富に整備し,ユーザシステムの早期立ち上げを目指した.
一方,基本ソフトウェアとしては,標準システムと拡張システムIを準備した.標準システムは,いわゆるエントリレベルのシステムで,プログラミング環境としては,プログラムテンプレート方式のプレパックとMAP(アセンブラ)が利用可能であった.拡張システムIでは,プログラミング環境としてより豊富なライブラリ群を準備したほかに,オンラインシステムやプログラムの連続実行がサポートされた.
TOSBAC-1350には,上位機として1975年5月に発表されたモデルIII(1975年5月発表)とモデルVがある(商品ラインアップとしては,TOSBAC-1350,同モデルIII,同モデルVという構成であり,最下位モデルにはモデルIという呼称は正式にはつけられなかった).
モデルIIIでは,ハードウェアの改良による高速化,高機能化,大容量化を実現すると同時に,基本システムとしては,3多重処理が可能な拡張システムIIと,同時に8台の端末からのマルチエントリとバックグラウンド処理が可能なMDES/1350を追加した.また,プログラミング環境としても,手続き型の簡易言語MPGとJIS水準3000(当時)対応FORTRANを追加した.
モデルVは,TOSBAC-1350の最上位モデルの位置づけではあったが,ACOS-200の下位機としての性格が強く,プログラミング環境としてACOS-200とソース互換性のあるCOBOLをサポートしたが,TOSBAC-1350,同モデルIIIからはデータの互換性,変換ツールなどが提供されたのみであった.
TOSBAC-1350 | TOSBAC-1350モデルIII | TOSBAC-1350モデルV | ||
---|---|---|---|---|
記憶素子 | ICメモリ | ICメモリ | ICメモリ | |
サイクルタイム | 0.8μs/バイト | 0.6μs/バイト | ||
記憶容量 | 8KB〜32KB | 16KB〜32KB | 32KB〜64KB | |
命令数 | 59 | 59 | 61 | |
入出力チャネル | 16 | 16 | ||
磁気ディスク | 2.45MB | 9.8MB | 9.8MB-39.2MB | |
カセット磁気テープ | 800bpi | 800bpi | 800bpi | |
磁気テープ(オプション) | 1600bpi(800bpi) | 1600bpi(800bpi) | 1600bpi(800bpi) |