【三菱電機】 MELCOM70 MX/5000-SPシリーズ,MX/5000II-SPシリーズ

1989年に発表された三菱電機のMX/5000-SPシリーズは,国産で初めて自動ベクトル化FORTRANと内蔵型ベクトルプロセッサを搭載したスーパーミニコンで,MX/5600-SP,MX/5700-SP,MX/5800-SPの3モデルから構成される(MX/5800-SPは内蔵型ベクトルプロセッサを2台搭載可能).チャネル接続の外付けアレイプロセッサに比べ,内蔵型のため,ベクトルデータの転送オーバーヘッドやスカラ演算とベクトル演算の混在によるオーバーヘッドを解消している.

内蔵型ベクトルプロセッサである科学技術計算プロセッサ(SP:Scientific Processor)は,MX/5000シリーズの基本処理装置に付加されるハードウェアおよびファームウェアであり,ベクトル演算を実行する浮動小数点演算器や32個の浮動小数点レジスタファイルなどから構成されている.浮動小数点演算器は,4段パイプライン構造の加算・減算器と乗算器で構成され,各演算器のパイプラインのピッチは100n秒である.加算・減算器と乗算器は並列動作可能なため,SP全体のピーク性能は20MFLOPSとなる.SP命令は,MXシリーズのスカラ命令と同一の命令体系にあるため,同一命令列中にスカラ命令と混在させることが可能である.

自動ベクトル化FORTRANは,従来のプログラムをそのままコンパイルするだけで,プログラム中のDOループの並列演算性を解析してベクトル化に適したものを選び,自動的に効率の良いベクトル命令を生成する.また,プログラムの動的性能特性を分析する実行性能測定ツール(FORTRANプロファイラ)や240個のSPライブラリも用意されており,明示的にSPを利用することもできる.

1990年9月に発表されたMELCOM70 MX/5000IIシリーズでは,付加プロセッサとして,ピーク性能20MFLOPSの内蔵型ベクトルプロセッサ(SP)に加えて,データの検索・ソートといったデータ処理をソフトウェアによる処理と比べて3〜50倍高速化する高速ソートプロセッサや,高速イメージプロセッサ,ファクシミリコンバージョンプロセッサ,文字認識プロセッサなどが搭載可能である.


  
MELCOM70 MX5800-SP