COSMOシリーズ モデル700の下位機として1975年に発表された.仮想制御記憶方式の実用化による高性能ファームウェアの実現により,価格/性能比が高く,CPUへのLSIの採用や誤りの自動訂正,仮想制御記憶を用いたマイクロ診断などにより,信頼性が高い小型計算機システムであった.
CPUは,マイクロプログラムで制御されていた.マイクロ命令長は32ビットで,マイクロプログラムを格納する制御メモリは,ROMとRAM(WCS:書き込み可能制御記憶)の複合形式となっており,標準で,ROMが3.5キロ語,WCSが0.5キロ語載されていた.
マイクロプログラムでは,仮想制御記憶方式という独自のアドレス方式を採用し,8K 語から成る制御メモリの論理アドレスを,512語を単位ブロックとして物理アドレスにマッピングした.これにより,ROMのどこかのブロックに固定障害が発生した場合,そのブロックの内容を主記憶からWCSにロードし,そのROMにマッピングしていた論理アドレスをWCSにマッピングすることにより,CPUの動作を継続させることができた.また,ファームウェアの開発において,それが格納されるROMの論理アドレスをWCSにマッピングさせてWCS上で動作させることにより,デバッグが容易にできた.
命令処理の高速化のために,大型機で用いられていた先行制御方式を取り入れ,演算の実行と並行して,次の命令のフェッチを行った.先行制御もマイクロプログラムで実現した.
入出力処理装置には,内蔵型ディスクファイル入出力処理装置(IFA),高速入出力処理装置(SEL),ダイレクト入出力装置(DIO),多重入出力処理装置(MPX),回線制御処理装置(ICA),ダイレクト・メモリ・アクセス・チャネル(DMA)があった.これらは,CPUと一体化されており,DMAを除いて,CPUのマイクロプログラムの制御の下で動作した.これにより,入出力処理装置のハードウェアが単純化されると共に,マイクロ診断が可能となった.ただし,CPUの演算実行処理への介入時間を減らすため,IFAと高速入出力処理装置のデータ転送制御は,ハードワイヤード・ロジックによりサイクルスティール制御が行われた.
IFAでは,データ転送に間接データアドレス方式を可能とし,データ転送の途中でページ境界をまたがると,マッピング・テーブルを引いてアドレスを切り替えることにより,ページ・スキャタリングを自動的に行い,総合的な性能向上に寄与した.
オペレーティングシステムは,バッチ処理,遠隔バッチ処理,トランザクション処理,リアルタイム処理,TSS処理の5次元の処理形態と,シンビオント,および,スプーリングを同時に行い,8個のユーザ・ジョブを並列処理できるUPS(Universal Processing System)を搭載した.
MELCOM COSMOシリーズ モデル500の主な仕様は次のとおり.
主記憶 | 素子 | IC | |
---|---|---|---|
容量 | 32KB〜512KB | ||
増設単位 | 16KB | ||
語長 | 16bit | ||
読み出し幅 | 32bit+誤り訂正符号7bit | ||
自動誤り訂正 | 1bit誤り訂正,2bit誤り検出 | ||
サイクルタイム | 0.8μs | ||
CPU | データ形式 | 二進固定小数点(語,倍語) | |
論理数(1bit,byte,語,倍語) | |||
可変長文字(1〜256byte) | |||
可変長十進数(1〜16byte) | |||
浮動小数点(短精度:32bit,倍精度:64bit) | |||
命令語長 | 1語,2語,3語,4語 | ||
命令種類 | 160種 | ||
アドレッシング | 直接,相対,インデックス,間接 | ||
レジスタ | 汎用レジスタ | 16(うちインデックス・レジスタ3) | |
浮動小数点レジスタ | 2 | ||
演算速度 | 二進固定小数点加算 | 0.8μs | |
十進数加算(5桁) | 25μs | ||
32bit浮動小数点加算 | 12μs | ||
入出力装置 | 記憶容量 | ||
交換型磁気ディスク装置 | 50MB(転送速度806KB/s,平均アクセス時間38.3m) | ||
100MB | |||
200MB | |||
カートリッジ磁気ディスク装置 | 10MB | ||
固定ヘッド磁気ディスク装置 | 1MB(平均アクセス時間8.3ms) | ||
磁気テープ装置(転送速度40KB/s,60KB/s,120KB/s) | |||
カードリーダ | |||
ラインプリンタ |