【日本電気】 NEAC-L2

1961年,日本電気の研究所にて,数年先を目標に基礎的研究を重視した超高速,大型計算機・NEAC-L2の開発構想が立てられた.開発全体は3フェーズに分けられ,第一フェーズで基本的な装置を開発,その後記憶容量や周辺装置の増強を行うこととされ,第一フェーズの完了が1964年6月であった.心臓部となる基本回路には,電流切り換え型の高速回路が小林亮により考案され,Geトランジスタでクロック30MHzの高速な動作を実現している.本機には当時の先端的な高速化手法やハードウエアが極力とりいれられており,
以下が代表例であった.

  • 複数命令の多重(同時)処理
  • インタレースによる記憶装置の高性能化
  • マルチプログラミング
  • プログラム割り込み方式
  • 10MHz2相の基本論理回路
  • 40ビット100nsの加算器
  • 100nsのトンネル・ダイオード記憶装置(レジスタ類に使用)
  • サイクルタイム1μsの非破壊読み出し型磁気コアメモリ(主記憶に使用)

本開発により,多くの貴重な経験やデータを得る事ができ,後の大型計算機の開発に役立った.


NEAC-L2の諸元
完成時期 1964年6月
演算方式 2進,固定および浮動小数点方式
演算素子 トランジスタ  約16,000個
ダイオード   約50,000個
語の構成 2進36ビット
固定小数点 符号+35ビット
浮動小数点 符号+指数7ビット+仮数28ビット
指令(命令) 1 1/2アドレス方式 命令の種類140
演算速度     固定小数点      浮動小数点
加減算 0.5〜2μs       1.4〜2.6μs
乗算  1.9〜7.7μs      2.4〜7.0μs
除算  11.4μs        9.8μs
記憶装置(磁心)

        (固定)

8192語 サイクルタイム 読出し 1μs
             書込み 2μs
ROM 1024語,サイクルタイム 0.5μs
インデックスレジスタ 15個,トンネル・ダイオード使用 アクセスタイム50ns
磁気ディスク装置 50Mビット,平均アクセスタイム250ms
90k字/秒
磁気テープ装置 テープ速度 4m/秒 記録密度 10ビット/mm 8台
80k字/秒
ラインプリンタ 1行120字 文字種類96 300行/分 1台
フォトテープリーダ 読取速度 200字/秒,1,000字/秒 各1台
鑽孔タイプライタ 印字速度 500字/分 鑽孔速度 700字/分 5台
消費電力 約20kVA

 
NEAC-L2NEAC-L2のトランジスタパッケージ