MIA(Multivendor Integration Architecture)は特定のコンピュータソフトウェアシステムではなく,ユーザがアプリケーションを開発しシステムとして組み上げる際に直接かかわるレベルのインタフェース仕様の集合として定義されるアプリケーションアーキテクチャである.具体的には,上位レベルのアプリケーションプログラムインタフェース(API),通信プロトコル(SII),ヒューマンインタフェース(HUI)等から構成されているが,その中核はAPIとSIIである.
MIAの基本概念は以下のとおりである.
各社メインフレームからUNIXやNTサーバ機までを含む広範なハードウェアおよびOS,DBMS,TPモニタ等からなる基本ソフトウェアをカバーする共通のAPIとプロトコルを規定することにより,ハードウェア独立性のみならず「プラットフォーム(ハードウェアおよび基本ソフトウェア)独立性」を達成する.これによりアプリケーションポータビリティ,インターオペラビリティ,スケーラビリティを提供できる真のオープンシステムを実現する.
MIAプロジェクトはNTT研究所の主管のもと1988年秋にIBM,DEC,NEC,日立,富士通5社との共同開発の形態で開始され,1991年初頭にMIA仕様第1版を完成した.翌平からNTTの汎用コンピュータ調達仕様として活用が開始された.また,1992年からはネットワーク管理フォーラム(NMF)内に日米欧のキャリアとベンダがSPIRITグループを結成して,MIAをベースにしたキャリア共通プラットフォーム調達仕様(SPIRIT仕様)の規定を開始し,これまですでに4版を重ねている.NTTは1996年からこのSPIRIT仕様による調達を開始し,欧州を中心とした主要キャリアもSPIRIT仕様を採用した.
これまでMIA/SPIRITはIBM,DEC,NEC,日立,富士通のメインフレーム,IBM,DEC,HP,Unisys,NCR,日立のUNIXサーバ,DEC,Unisys,NCRのNTサーバに実装された.OSだけで見ても,5社のメインフレームOS,UNIXおよびNTをカバーし,TPモニタに至っては世界の主要製品をほとんどをカバーすることとなった(5社のメインフレーム独自TPモニタ,TUXIDO,TOPEND,Encina,OpenTP).
商用導入については,上記のように日欧のキャリアを中心に導入された.日本はNTTを中心にメインフレーム,UNIX,NTと幅広く導入され,欧州ではSPIRIT仕様がETIS(欧州キャリア連合)に採用されたこともあって,BT,DT,Telecom Italia,PTT Telecom等にUNIXやNTを中心に導入されたが,米国では限定的であった.
上記の基本概念に基づくMIAの最大の狙いは,ユーザ資産の保護によるTCO(Total Cost of Ownership)の削減であり,アプリケーション資産を継承したプラットフォームの更改,部分的なサブシステムの更改,継続的な最適プラットフォームの調達を可能にすることによりこれを達成しようとするものであった.また,当時NTTが置かれていた状況から,コンピュータ国際調達の簡易化と透明性の確保,およびDIPSのソフトランディングの実現がこれらにもまして大きな狙いであった.