【富士通】 パラメトロン式計算機 FACOM 200,201,202,212

公開日:2011年4月12日
最終更新日: 2023年7月8日

FACOM 200は1958年9月に完成した,富士通信機製造のパラメトロン式計算機の試作機である.FACOM 212は,パラメトロン式の小型事務用計算機であり,FACOM 200を基に開発され,1959年4月に出荷された.これらの製造経験を踏まえて,1960年には,同社が他の機関と共同開発したパラメトロン式の科学技術用計算機であるFACOM 201と202が完成した.FACOM 201は,電電公社電気通信研究所の指導を受けて開発された中型機MUSASHINO-1Bの商用版であり,FACOM 202は,東京大学高橋秀俊研究室と共同開発された大型機PC-2の商用版である.

以下,FACOM 212の技術について述べる.

FACOM 212は,当時の事務会計の機械化への適用を第一として開発された計算機である.そのために,パンチカードの利用を考慮して,IBM 513集団複写鑽孔機やIBM 405英字式会計機との結合が可能であった(図1参照).IBM 513はIBMカードの読込みと鑽孔(パンチ),IBM 405は印刷のために用いられた.それらはFACOM 931カード入出力制御装置に結合された.FACOM 931はFACOM 212に結合されたIBM機の制御や相互間を流れるデータのコード変換を担った.

FACOM 212の基本仕様は次のとおりである.

  • 10進12桁を1語とし,磁心コアメモリから成る32語の記憶装置
  • 演算回路のチェックはパリティ方式
  • フジカード(*1)を用いた8語の常数記憶装置(*2)
  • プログラムをフジカードから与える方法と記憶装置(*3)に置く方法の併用
セントラルコンピュータのブロックダイアグラム(図2)にこの様子が見て取れる.



(*1) フジカード:縦22個,横72個の穴をあけ得るカード.読込みはフジカード読取機を用いて行なう.FACOM 212では,縦21個,横64個の穴を使用して,1枚に64ステップの命令と4語の定数を置いた.FACOM 212には同時に2枚のフジカードが使用できた.
(*2) 常数記憶:計算に必要となる定数を置く.
(*3) 1語に4つの命令を置き,32語で最大128ステップの命令を扱えた.

FACOM 212の本体の外観FACOM 212の本体の制御盤FACOM 212のパラメトロン増幅器