石井 治は1929年10月11日生まれ. 1952年3月慶應義塾大学工学部電気工学科卒業.直ちに電気通信省電気通信研究所に入り, 器材実用化部七条祐三の研究室で磁性材料の研究を担当していたが, 先輩の高橋 茂に勧められ,1959年通産省電気試験所に移り, 電子部回路課でコンピュータの研究を始めた.
ちょうど江崎ダイオードが発明された時であり,電気試験所では高橋が欧米視察から帰国して超高速計算機ETL Mark VIの計画を始めた時であった.石井と高橋は黒板を前にして討論中に,エサキダイオード,抵抗,通常のダイオードの3素子を組み合わせてメモリ素子とすることを思いついた.石井はこの着想をMark VIの高速メモリとして実現したが,肝心の江崎ダイオードが部品として発達せず,実用には至らなかった.
石井は1963〜64年カリフォルニア大学ロサンゼルス校でJerry Estrinが主宰していた可変構造型コンピュータの開発プロジェクトに参加,帰国後は通産省の大型プロジェクト「超高性能電子計算機」,「パターン情報処理システム」の研究開発に関係した.1966年9月,石井は「エサキダイオードによる高速記憶装置の研究」により,慶應義塾大学より工学博士の学位を授与された.1972年11月ソフトウェア部長に任命されたが,石井自身の研究の分野は終始メモリにあった.
石井は1983年3月電子技術総合研究所(電気試験所が改名)を辞し,同年4月1日に日本工業大学教授に就任した.また客員教授として慶應義塾大学理工学部にも関係した.学会では情報処理学会規格委員会フレキシブル磁気メディア国内委員会委員長, IEEE東京支部長などを務めた.石井は筆が立ち,コンピュータ特にメモリに関連する随筆が多数あり,また「論理と記憶」,「記憶とデバイス」,「超LSIと情報処理」などの著書がある.
1988年8月28日逝去.
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