日本のコンピュータパイオニア

森口 繁一森口 繁一
(もりぐち しげいち)
1916〜2002

森口繁一は1916年9月11日生まれ.1938年東大工学部航空学科卒業.同講師,助教授,教授,1977年定年,名誉教授.1977〜82年電気通信大学教授.1982〜87年東京電機大学教授.1954年工学博士.

情報処理分野での森口の活動の中心は,プログラムの作成を中軸とする計算機の活用法の教育普及にあった.1960年代はGARIOA留学生として2年間アメリカで統計学を学ぶかたわら,胎動期にあった電子計算機を見学し,アメリカ最初の電子計算機の大会にも出席した.帰国後しばらくはパンチカード計算機械の活用に力を入れ,通産省の産業連関分析に関係する20次の行列の逆行列の計算に協力したりもした.「数理科学綜合研究」では山内二郎を班長とする第四班(電子計算機関係)の企画運営に携わった.東大でTACが動き出すと,その運用に参画し,標準入出力と記憶装置内容のプリンタへの打ち出しルーチンの作成を指揮し,プログラミングの教材を作り,自らも古賀逸策の依頼で水晶の振動の計算をした.国産の電子計算機が動き始めると,共通の記号入力言語SIP(Symbolic Input Program)を提唱 した.

1960年代はALGOLとFORTRANに力を入れた.ヨーロッパでALGOLの息吹を感得し,1年間のニューヨーク滞在中にIBM7090をFORTRANで使い,スタンフォード大学でBurroughsの計算機をBALGOLで使ったのが発端.東大の計算センターの設立・運営,IBM7090の共同利用組織UNICON(University Contribution)の運営,文部省の「情報処理教育に関する会議」への参画,工学部進学生を対象とする「算法通論」の開始,文科系学部の情報処理教育への協力,全国共同利用の大型計算機センター計画立案への参加などがその背景にある.記念碑的な著書に「JIS FORTRAN入門」がある.

1970年代から80年代の初めにかけて,NHKの[コンピューター講座]や放送大学実験番組などに活躍.2000年にも「Excel/Basic基礎指南」を出版している.