JIS FORTRAN入門(上)(下)

JIS FORTRAN入門(上)(下)初版.1968年および1969年刊.初版は「HARP 5020に即して」の副題を持つ.

JIS FORTRAN入門(上)(下)初版.1968年および1969年刊.初版は「HARP 5020に即して」の副題を持つ.


左:本書に先行する「FORTRAN IV入門 —HARP5020に即して—」1965年刊.JIS FORTRAN入門はこれを下敷きに執筆されている.
中:JIS FORTRAN入門 第2版(上)(下)1973年刊.HARP­ 5020の副題が削除された.
右:JIS FORTRAN入門 第3版(上)(下)1984年刊.本書は現在も購入できる.

内容はページ表裏を使った演習問題の出題(上左)と解答(上右)の形式で,章末に関連文法のまとめがある.学習者のための記述に徹しているが,ところどころ、システム設計の洞察や警句もちりばめられている.下は下巻にある「オペレーター白痴論」と「オペレーター死亡論」.


発行年 1968年〜1969年
発行所 東京大学出版会
所有者 東京大学 工学・情報理工学図書館
史料所在地 〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学工学部2号館5F 工2号館図書室
公開情報 公開中
照会先 東京大学 工学・情報理工学図書館 工2号館図書室 Tel.03-5841-6315
kogaku2@lib.t.u-tokyo.ac.jphttps://library.t.u-tokyo.ac.jp/eng2.php

 1960年代後半は,コンピュータに集積回路が採用されることで商用化が一気に進み,社会のさまざまな場面で利用の始まった時期にあたる.そこに本格的なプログラミング教科書として出版された本書は,たちまち標準的教科書としての地位を確立した.これは多くの学校や企業の演習テキストとして使われた,記念碑的な書籍である.
 著者の森口繁一 (1916 - 2002) は数理統計学を専門とするかたわら,コンピュータ黎明期からその利用教育に携わり,50年代にはアセンブラ言語に相当する標準記号入力言語 SIPの普及活動を行った.60年代に入り,ALGOLやFORTRANなどのコンパイラ言語がプログラミングの主流になると,その教育活動に転じた.後者言語のテキストとして執筆されたのが本書である.
 内容は徹底した演習主義をとり,演習問題と解答を対(つい)にした体裁である.習うより慣れろで,すべて演習は実際に読者がコーディングし,コンピュータにかけてみることを想定している.また初学者の躓きそうな箇所には,それを避けられるよう丁寧な注記が用意されており,著者・森口の優れた教育者としての配慮が分かる.
 当時コンピュータはまだ貴重品で,専門を志す学生も自由にそれに接することは困難であった.本書に添えられた豊富なパンチカード写真や印字出力例を見ながら,将来このすばらしい機械を使いこなす夢をふくらませていた.