東京オリンピック情報システム関連資料リスト

A. 端末装置の送受信データの例、電子計算機から出力された登録表及び速報などの例

1. 選手登録集計表("No. of Athletes by Country and by Sport” B4判5枚、 Oct. 13, 1964)
参加選手数の国別および競技別一覧表、8月22日に作成された表に開会後に遅れて登録した選手数を含めたもの
2. Typewriter型の端末装置上で印字された送信メッセージと検証(verification)メッセージ
IBM 1050型データ送受信装置で送受信された入力および赤字の検証データ
3. 陸上・水泳のフラッシュ・レポート(少数枚)
陸上および水泳競技場に置かれた1050型で、各試合終了直後に印字
4. TV画面上に表示用簡略フラッシュ・レポート(11cm x 15cm, 約40枚)
ニュースTV画面にsuperimposeするために出力された文字数の少ない速報
5. 大型詳細成績表(B4判、40種以上)
競技種目、選手名・国籍・競技成績、審判名、気象データ、過去のオリンピック記録・世界記録などを含む詳細、試合終了後直ちに印刷・Ricoh機で複写・配布された
6. テレタイプ送信用速報(B5判、3枚、テレタイプ網で送信された速報1,788枚の一部) 主計算機で出力されたカードが、変換装置で紙テープへ変換されてから、テレタイプの読取装置で入力され、世界中へ発信された
7. ヨット種目の大型詳細成績表集(B4判、147枚) Registration List、Rounding Order List(各ブイを廻航した順位)、レース毎の順位と得点(対数計算で算出)、7レースの積算順位表。ヨット競技に特有の各艇からのProtestについて、裁定経過Listと確定後List
8. 国別メダル獲得順位表(B4判2枚)、種目別・国別メダル獲得表(“Medal List” Oct. 24, 1964)(B4判5枚) 最終日に印刷されたもので、日本は第3位になっている
9. 種目別メダル受賞者表(“Medalists” Oct. 24, 1964) (B4判5枚)  

B. システム開発・管理関連資料

1. プログラム一覧表("Summary of Olympic System Programs” July 11, 1964)
B4判14ページ、開発されたソフトウェアに含まれる制御プログラム及びお競技速報用プログラムなどの一覧表、プログラム作成者名、プログラム名、サイズ等を含む
2. 仕様書などの一覧表(“Olympic System Planning Manual” Sept. 8, 1964)
B4判23ページ、プロジェクト計画書、ソフトの設計仕様書などの文書類の一覧表
3. 詳細設計仕様全巻
バインダー5冊、英文、流れ図・表を含む千数百ぺージ、入出力書式、制御プログラム、登録、163種目の4000試合の処理、全記録集等のプログラム
4. 週間進捗管理表(“Olympic 1410 Programming Status Statistics” March 14, 1964”) B4判5ページ、ソフトウェア開発における電子計算機で生成した詳細進捗管理表、本邦初のコンピュータによるソフトウェアの生産管理
5. プログラムテストと進行管理(July 14, 1964) A4判49ページ、プログラムのテストと進行管理のやり方をまとめた説明資料
6. プロジェクト最終報告書("Final Report of Olympic Project” Oct. 24, 1964) A4判49ページの英文報告書、Oct. 24, 1964、当時はIBM Confidential

C. プロジェクトに関する論文・回想記・講演原稿、写真など

1. 竹下 亨著「東京オリンピックに使われたリアルタイム・システムについて」(情報処理学会第6回プログラミング・シンポジウム論文誌、Jan, 1965, pp. A7-17) この論文に対して1988年に「山内業績賞」。授賞理由は優れた先駆性と応用性を持ちプログラミングの進歩発展に顕著な貢献
2. 竹下 亨著「オリンピックと情報処理」(情報処理Vol. 6 No. 3, May 1965, pp. 140-148)  
3. 竹下 亨著「プログラム制作上の進行管理と品質管理」(情報処理Vol. 6 No. 5, Sept.1965, pp. 260-265)  
4. 西谷真二著「東京オリンピック・システム」(ビジネス・コミュニケーション社発行の月刊誌「ビジネスコミュニケーション」Vol.10 No.4, 1973, pp. 52-56) 本邦初の実時間制御プログラムを開発し、後にソフトウェア開発の大御所となった技術者の回想記で、当時の様子がよくわかる
5. IBM東京オリンピック・プロジェクト50周年の集い発起人制作「IBM Tokyo Olympic Project回想記集」(May 19, 2012) A4判42ページ、プロジェクトのメンバーであった16名が寄稿した半世紀後の回想
6. 竹下 亨著「あのプロジェクトは如何にして始り、成功し、影響をもたらしたか」(講演原稿、A4判21ページ、May 19, 2012);59枚のslide(OpenOfficeで作成) 2012年5月19日に開催された「IBM Tokyo Olympic Project 50周年記念の集い」で行われた講演、プロジェクトの経緯・経過・意義などを簡潔に、約405分に、まとめたもの
7. 当時のプロジェクトの模様を撮影した写真(多数)、ニュース記事(多数)  

D. プロジェクトが対象としたオリンピック大会の全貌、詳細記録図鑑書

1. 詳細日程表("PROGRAMME FOR THE GAMES OF THE XVIII OLYMPIAD”) 72cm x 50cm、表英語、裏仏語、オリンピック東京大会組織委員会制作・発行、大会の規模・日程を知るために重要
2. 第十八回オリンピック競技大会公式報告書 上巻(A4判684ページ、オリンピック東京大会組織委員会、July 20, 1966) このpp. 396-399に「電子計算機(IBM)の活用」として、図と写真入りでIBM Tokyo Olympic Projectの詳細な記述がある
3. 第十八回オリンピック競技大会公式報告書 下巻(A4判720ページ、オリンピック東京大会組織委員会、July 20, 1966)  

※これら3つの文献は、当プロジェクトの関係者の制作または著作したものではないが、「IBM Tokyo Olympic Project」の対象はどのようなものであったかを知るために、極めて重要。1.はどこにも保管されていない可能性があり、2.と3.は限定版で、一般に入手・閲覧は不可能。日の丸と五輪マークを表紙に印刷した箱入りの豪華な装丁で、多数のカラー写真を含み、貴重な文献。

E. 追加資料

1. "Machine Configuration and Data Flow in IBM Olympic Data Center” (英文、6ページ、Dec. 10, 1962)
2. 「大会中のDatacenterのOperation」 (手書き、6ページ、Oct. 4, 1964)
3. "IBM Olympic Tele-Processing System – an Information Service in Keeping with the Times”(英文小冊子、14ページ、日本IBM、1964)
4. 「IBM電子計算機による第18回オリンピック東京大会の記録処理」(英文2段組み小冊子、5ページ、日本IBMオリンピック本部、October, 1964)
5. 「オリンピック東京大会におけるIBMの仕事」(写真入り、小冊子、10ページ、日本IBM、October, 1964)
6. "IBM Olympic Datacenter Fact Sheet” (4ページ、IBM Japan Olympic Dept. , Aug. 18, 1964)
7. Final NEWS RELEASE  (1ページ、IBM Japan Olympic Dept., Oct. 24, 1964)
8. 「オリンピック舞台裏を訪ねて、システム課長竹下 亨氏とインタービュー」(IBM USERS No 30, 1964年10月10日号、p.4)
9. 「オリンピックの記録を追う、科学の選手、電子計算機」(毎日新聞、昭和39年(1964年)10月13日発行の夕刊(3)ページ目、上半分以上を占める写真・図入りの詳細記事)
10. 竹下 亨著「オリンピック・システムのソフトウェアのデザインを振り返る」(手書き、400字詰原稿用紙33枚+図、1964年12月、未発表)

 

 


東京オリンピック情報システム関連遺産の例

IBM Tokyo Olympic Systemの構成

A,Bはそれぞれ2系列(計算機4台の複合体)。競技場から送信されたデータは1448-1440でcheckされ、1410で速報が生成され。直接印刷されると同時に、A, B, Cの3種類のカードが穿孔され、Aは1440に入力されてflashが陸上・水泳競技場へ、Bは1013に入力して詳細速報が13か所の1443へ、Cはteletypeの入力となって全世界へ送信された。
以下の速報はこのデータの流れの中で生成された。

 

IBM Olympic Datacenterの内部

東京オリンピック情報システムの開発・運営に使用された電子計算機器。当時はIBM Tokyo Olympic Tele-Processing Systemと呼ばれた(残存する多数の写真の1枚)

男子競泳400M自由形決勝レースの入力

端末から入力されたデータは極限まで単純化された。競技・種目名などがコード化されたheader messageで始まる。続いて、lane noとfinish timeだけの数字の行を送信すれば、元のmessageと選手のfull nameと国名もverifyのために赤字で返信された。競技役員の確認・承認で、終了messageが送信されば、直ぐにきれいにレイアウトされたFlash Reportと複雑なResult Reportの印刷が始まった。(関連資料リストNo:A-2)

男子競泳400M自由形Flash Report

競技場およびpress centerなどに置かれた端末に至急報として送信された簡略成績表。(関連資料リストNo:A-3)

詳細速報例(中規模の情報量・複雑度)

ブルガリアとロシアとのバレーの試合の成績表。このような詳細速報が試合後直ちに作成され、配布されることとなった。このような情報量が多い複雑な表が数分で出力されるのは当時は驚異であった。(関連資料リストNo:A-5)

男子競泳400M自由形 Result Report

世界記録やオリンピック記録なども含めた詳細な成績表。それに加えて全試合が終了した競技の成績表は、その日の中に全記録集用に印刷された。(関連資料リストNo:A-5)

国別メダル獲得順位表

国別のメダル獲得数を集計し、順位づけした一覧表。毎日複数回出力(この表は最終日のものでは日本は第3位)。
(関連資料リストNo:A-8)

週間進捗管理表

ソフト開発の進捗を'見える化'しようと考案、各プログラムの命令数、コーディング、単体テスト、結合テストの3段階、各段階の%を入力。毎週末、各担当者が変更個所だけ赤で記入。上層管理者用のsummary reportも当レポートより作成。ソフト開発の電子計算機による生産管理を実現した。(本邦初)
(関連資料リストNo:B-4)