日本のコンピュータパイオニア:榎本 肇

榎本 肇榎本 肇
(えのもと はじめ)
1925〜2010

榎本肇は1925年2月16日生まれ.1948年東京工業大学卒業.郵政省,国際電電,東京工業大学,富士通,芝浦工業大学に勤務した.フェージングの統計的研究を情報理論的に行い,通信制御用計算機の開発に関係した.また情報理論,増幅機能の原理やソフトウェアの概念構造の研究を行い,その過程で対立統合の性質を検討した.

1960年トンネル・ダイオードを利用した世界最初の全固体6ビットTV・PCMコーダを実現した.PCMによる帯域圧縮方法の情報理論的分析は1957年予測符号化による方式を発表した.これはフェージングの統計的研究と関連する.

1962年の情報の連結関係の分析方法と,それを用いた識別符号割当方法による個別データの特徴分析・統合化の方法を音声やTV信号波形の特徴抽出関数に適用し直交変換の研究を行い,1965年アダマール変換,1966年傾斜成分を実現する傾斜直交変換の装置化を行った.これを機に世界的に直交変換の開発が進んだ.また,大次元行列のための基底ベクトルを一般的に与える方法を定義した.

多様体の方法論を,スカラ・データは,構造線として直交性のあるモード特徴を,ベクトルには,ポテンシャル特徴の抽出を1971,1987年に発表した.対象記述には,形式的対立,階層的対立の関係データから統合化を関数的に行う方法を形式言語において定式化した.計算機言語に対しては,名詞,動詞名に属性値を付属させ,抽象—具体化とサービス概念によって,構造体にインタフェース機能と関連させた.このようなサービスの論理モデルを1984年提案した.

以上の枠組みで,仕様記述にTELL(Total Elaboration Language),分野記述用にWELL(Window-based Elaboration Language)を開発した.これらは,準自然言語,グラフ構造,内包論理の間の相互変換が可能な可視型言語として,1982年と1992年から開発し,マルチメディア・コンテンツ作成や,意図処理システムの実現に使用し,初心者にも十分の適用性が示された.


(2003.8.29現在)

2010年5月13日逝去(事務局注)